Episode:11
「店、どの辺か……分かる?」
「ごめん、ぜんぜん。でも、聞けばなんか分かると思う」
言って彼が歩き出す。
よく分からないままについていくと、アーマル君、近くの花屋さんに入った。
「すみません」
店員さんにさっさと声をかける。あたしじゃとても、あんなふうには出来ないだろう。
「この住所の店なんですけど。古物商で」
「古物商? 聞かないし、この住所も見たことないわね……」
住所の一覧に載ってないだけあって、やっぱり店探しは難関みたいだ。
「ごめんね、力になれなくて」
店員さんが謝った後、何かを思い出したみたいに手を叩いた。
「そうだ、バーの親父さんなら顔広いから、何か知ってるかも。待って、いま地図書いてあげる」
地図を描きながらその人が言うには、よく花を届けに行くらしい。
「この時間なら、店で仕込みしてるはず。行って脇の裏口、叩いてみて」
「ありがとうございます」
お礼を言って、花屋を後にする。
バーは地図を見る限り、ここからそう遠くはなさそうだった。たぶん同じブロック内だ。
「曲がるの、ここか?」
「たぶん……」
高級ブランドの店らしいところで、路地へ入る。
目抜き通りと違って、やっぱりこういう路地は細いしくねっていて、見通しが良くない。あと店構えや行きかう人も、華やかさよりは怪しさが勝っていた。
――早く抜けたほうがいいかな?
そんなことを思う。アーマル君も同じことを考えたのか、自然と早足だ。
と、向こうから何か不穏な空気を纏った一団が来た。目つきが鋭くて、獲物を探す肉食竜みたいだ。
「ルーフェイア、寄って」
「うん」
何かイヤなものを感じて、二人で脇へ寄って壁に貼り付く。
男の数は三人。ただ距離が近くなってみると、鍛えてはあるけど実戦経験は少なそうだった。
警戒は解かない。この人たち自然な感じを必死で作っているけど、害意があるのが丸見えだ。
きっと何かあるはず……そう思いながら彼らを観察してると、案の定、あたしたちの前で立ち止まった。
「こんなところでお前、何をしている? この町はお前みたいなヤツが、来るところじゃないぞ」
「それは……」
答えようとして気づく。この人たち、あたしを見ていない。
もっと正確に言うと、アーマル君だけを見ている。他の通行人もあたしのことも、どういうわけか視界の外だ。