本編
現在ここでは、貴族が通うカスツール学園の卒業パーティが開催されている。
私は、真実の愛の相手である男爵令嬢プリシアの手を取ると壇上に上がり宣言した。
「この私、アスタール王国の第一王子であるルイスは宣言する。侯爵令嬢ルシア、お前は陰で男爵令嬢プリシアに対して、卑劣なイジメを行ったな。そのような女を将来の国母にすることはできない。よって、ここにお前との婚約を破棄する!!」
私の予想では、この宣言により、周りが騒然となるはずだった。しかし、周りを見渡すと、なぜか誰もこちらを見ていなかった。どういうことだろうか。
ザワザワしているところの音声を拾ってみると、以下のような会話が聞こえた
「大変だ、モンスターがこちらに向かってきている」
「ランクは?」
「S 級のキングドラゴンです」
「なんだと。下手すると国が滅ぶぞ」
「参加者の避難を優先させろ」
ルシアが私に近づいてくるとこっそり言った。
「殿下、モンスターを倒せば続きができますわよ」
気配を探ると、雑魚モンスターがこちらに向かって飛んできているのがわかった。
もうこんな雑魚モンスターをキングドラゴンと勘違いするとかないわ〜と思い、
外に出ると、雑魚モンスターに向かって滅殺魔法レイを放った。そしてモンスターは消滅した。
「え・・S級モンスター、キングドラゴンが消滅しました」
「なんだと?」
「王子が何か魔法を放ったら消滅したようです」
「バカを言うな災厄クラスだぞ?魔法一発で何て」
まだザワザワしているので、教えてあげることにした。
「いや、飛んできていたのは、雑魚モンスターだったんだよ。もう危険はないからパーティを再開しろ」
「で、殿下。承知致しました」
「うむ、わかればよろしい」
満足した私はまた壇上に向かうことにした。
後ろからは、
「あれが、雑魚モンスター?」
「殿下の強さから見たらってことじゃないか」
「噂には聞いていたが、凄まじいな」
そんな声が聞こえたが、無視することにした。本日のパーティのメインはこれじゃないのだ。
再び壇上に上がると私は今度こそ宣言した。
「この私、アスタール王国の第一王子であるルイスは宣言する。侯爵令嬢ルシア、お前は陰で男爵令嬢プリシアに対して、卑劣なイジメを行ったな。そのような女を将来の国母にすることはできない。よって、ここにお前との婚約を破棄する!!」
今度こそ、皆の注目は私たちに移るはずだった。しかし、また注目は別のところにいってしまったようだった。
「なんだと、レミ川が氾濫しそうだと?」
「はい、急激な雨でもう持ちそうにありません」
「あれが氾濫したら国土の半分は水に沈むぞ」
「今大至急、魔法士を動員して壁を強化しようとしていますがダメです。間に合いそうにありません」
「やむをえん。王都を破棄するしかない。民への避難指示を出せ」
また、何か騒いでいるよ・・・。
「どうしたものかな・・・」私が悩んでいると、ルシアが近くにきた
「水を持ち上げて海に移動させちゃえば良いのです」
遠方を魔法でみると、川の水は確かに増えている。でもその程度たしかに、移動すれば良いだけじゃないか。私は川の方にワープすると、川の中の水に魔力を注ぎ、宙に浮かして、海の方へと移動させて落とした。
「隊長、俺、夢でも見ているんですかね。山の大きさのような水が浮かび上がって海の方に移動していきます」
「ああ、そうだな。俺も夢を見ているんじゃないかって、ほっぺをつねっているがどうやっても夢から覚めない。どうやら現実みたいだぞ」
「信じられません。奇跡です」
「でも助かったんだ。これで川は氾濫しない」
会場に戻ってくると、
「王子万歳ー」という声援が聞こえた。
「あの程度のことで大袈裟だよ。パーティを再開させて」
「はっ、パーティを再開させろ」
そうして再びパーティは再開したのだった。
3度目の正直だ、と思い再び壇上に上がった。
叫んだ後、反応がないのは寂しいので、壇上に上がった後、周囲の様子を先に見ることにした。
するとまた騒ぎが起こっていた。
「なんだ、この魔力反応は」
「どうした?」
「隊長、この闇属性の魔力は・・・・」
「なんだ、早く言え」
「魔王です。魔王のシグナルです」
「な、なんだと。魔王は魔王城にいるんじゃないのか」
「どうやら魔力を隠して潜伏していたようです」
「ですが、殿下の魔法の余波で、隠蔽魔法が吹き飛んだ模様です」
「魔王はどこにいるんだ」
「お待ちください。位置、出ます」
すると、計測器からの光が私の方に向かってきた。正確には、私の真実の愛の相手である男爵令嬢プリシアの方に。
「えっ・・・。どう言うこと?」
僕がプリシアの方を向いて驚いていると、プリシアは突然笑い出した。
「くくく、我の正体を見破るとはやるではないか。国を内側から崩壊させるのも一興と思っておったが、バレたのであれば仕方ない。皆ここで死ぬが良い」
そう言って、プリシアは、黒い魔法の玉を頭上に作り始めた。
「あの魔力は、黒より黒き、伝説の魔法ブラックホール」
「もう終わりだ。全てはあの闇に飲み込まれ消える」
「こんなのってないよ」
「これはもう避難なんて意味がない。国が一瞬で消滅する」
また、みんな世界の終わり騒ぎをしているよ。
「ふははは、後少しの人生、嘆き叫ぶが良い」プリシアもなぜかノリノリだ。
「殿下、聖魔法」そんな声が聞こえたので、
もう、なんなんだと思いながら聖なる魔力を込めて、黒い玉を殴った。
玉は砕けて消えた。
「えっ・・・」プリシアは理解が追いついていないのかフリーズしている。
「ああ、ブラックホールって闇属性だろ?同じ量の聖属性と合わせることで反属性消滅という現象が発生して消えるんだよ。だから、もうその程度の話なのにみんな大袈裟なの」
全く、どうしてみんなこの程度のことで、世界の終わりのように騒ぐのだろうか。
プリシアは膝から崩れ落ちると、両手を床についた。
「我の最強魔法が、その程度の話なのじゃな・・・。もうこれは敵わない。降参じゃ」
「おおおおーーーー」
「ついに魔王軍が降伏したぞ」
「これで長かった戦いが終わるのか」
「やっと家族のもとに帰れる」
「殿下万歳ー」
「はいはい、それは良いから。パーティを再開するよ」
「はっ。承知しました」
もうこれで大丈夫だろう。よし壇上に上がって、周りをみると今度こそ私の方に注目が向いていた。
これでいけるな
「この私、アスタール王国の第一王子であるルイスは宣言する!」
そう、私は、真実の愛を皆に伝えるのだ。ってちょっと待った。プリシアは魔王だったよな。
ってことは、プリシアが虐められたというのも嘘?どうすれば良いんだ。
そこでフリーズした私の横に、侯爵令嬢ルシアが近づいてきたので、相談することにした。
「ルシア、どうしよう」
「ふふふ、殿下って強さは最強なのに、こういうことは苦手ですわよね。あんな魔王に騙されるなんて」
「うう・・・。面目ない」
「でもそんな殿下も大好きですわ。そうそう、国王陛下から私たちの結婚の許可がおりましたわ」
「ルシア!それだ!」
周りが私の宣言を待っているのがわかったので、私は宣言することにした。
「この私、アスタール王国の第一王子であるルイスは宣言する。私は、侯爵令嬢ルシアと結婚する。彼女は国母となり、我と共にこの王国を発展させていくことだろう」
「「ルイス様万歳、ルシア様万歳」」
そんな声が聞こえた。
「いやー、でもルシアとの婚約破棄をみんなに聞かれなくてよかった。でもどうしてそんな偶然が続いたんだろうな」
「どうしてでしょうね。うふふ」
=====
後の世に、王国の黄金時代を築いた最強の王ルイスの名が残っている。またその横には、ルイスの力をうまくコントロールし、導いた王妃ルシアの存在があったという。
ちなみに、ルシアはあまり自分では動きませんが、ルイスに劣らず最強レベルだったりします。その力を使って今回の・・・おっと、誰か来たようだ
(この後、婚約者視点の章を書く予定です)