不具合起きて欲しくない
朝、吐き気で目覚めた。実際には吐かなかったものの、食欲どころではなく、朝食の大半を残してしまった。看護師さんに吐き気を訴えると、吐き気止めを増やしてくれるとのことだ。
「朝吐き気する人は多いですねー、午前に吐き気止め入れますから、お昼は少し楽になるはずですよ」
「そうですか、ありがとうございます」
点滴に抗がん剤と吐き気止めを入れられて、ついでに採血されて、しばらく暇。洗濯物がたまっているので、今のうちに洗おうかとエコバックに服を詰めた。
洗濯は基本的に患者がする。病院のサービスに洗濯やパジャマの貸し出しもあるけど、高いので選ばなかった。
洗濯1回100円、乾燥1回200円。面倒なのが、小銭やアプリではなく、病院で買えるカードの電子マネーで支払わないといけないことだ。
そういうわけで乾燥まで済ませたのだが、取り出した服はなんだかじっとりしていた。
「うっわ、生乾き」
長田さんが通りかかって言った。
「あーそれ、いっぱい詰めると乾かないよ。2日分は行けるけど、3日分以上は乾燥もう一度やらないと無理だね」
「そうなんですか……」
太田さんも隣にいた。
「カード、なるべく金入れといたほうがいいよ、退院のとき払い戻ししてくれるし、売店での買い物にも使えるから」
「そうなんですね」
「自分で売店行けないときも、カードにたくさんお金入れとけば看護師さんにカード1枚渡して「これで払ってきてください」って言えるから」
「え、行けなくなることなんてあるんですか?」
太田さんは、ニチャア……と嫌な笑いをした。
「和泉さんはまだ抗がん剤の怖さを知らないねえ……具合悪くて行けないなんて普通にあるよ」
「……五万くらい入れときます」
あとで聞いたところによると、具合悪いだけじゃなくて、病室出るの禁止で物理的に行けないということもあるらしい。何のことかわからなかったが、わからないほうがいいこともあったなと後に思うのだった。




