こういうことはマジ気まずい
月曜日に千歳と病院に行って、予約していた産婦人科の受付に行く。受付後、看護師さんに採取室なる部屋に案内された。
「ここで、中から鍵を閉めて採取してください。採取したものはこの容器に入れて、採取した時刻を書いて提出してください」
看護師さんから手のひらサイズの容器を渡され、採取室に1人で入るよう促された。
『じゃあ、頑張ってな』
「う、うん……」
千歳にはそう言われたが、頑張れと言われてもな。
採取室に入ると、椅子1つと、TVモニタと、大きな棚があり、棚にはAVがきちんと整頓されて並べられていた。病院でこんな部屋あるんだ!?
1人きり。覚悟を決めて椅子に座る。保存するのは、俺の希望というより、千歳の希望なんだよな。
俺は、開き直ってスマホを出した。FANZAのお気に入りを開く。お気に入りに入れてた、黒髪ロングでなるべく千歳に似た雰囲気の女優を選んだ。
イヤホンをつけて、最高潮の場面まで早送りしてことを済ませ、容器に取るべきものを採取。採取時刻を書いて、採取室から出た。受付で看護師さんに容器を渡す。
早いと思われてたらやだな、とふと思い、それから、看護師さんは仕事でやってるのに俺最低なこと気にしてるな、と思って千歳のところへ向かう。
『おっ、早かったな』
「そういうこと言わないでよ……」
『いっぱい取れたか? いっぱい保存したか?』
普通の人並みだよ、と言いそうになって、千歳の瞳が潤んでいるのに気づいて、俺は口をつぐんだ。
「大丈夫、ちゃんと取ったから。なんにも心配いらない」
俺は千歳の背中をなでた。
「お会計済んだらさ、駅ビルのユニクロでさ、入院用に着替えとかいろいろ買い足したいから、買いもらしがないかいっしょに見てくれないかな?」
『うん』
でも、千歳はずっと元気がなかった。




