歩けるなんてもんじゃない
翌日。尿道カテーテルを抜かれてめちゃくちゃ痛い思いをし、血栓予防のためとかで歩かされた。しかし、普通に痛い! 左鼠径部の傷口が痛い!
「こんなに痛いのに歩いていいんですか……?」
思わず看護師さんに聞くと、看護師さんはさらっと言った。
「そのほうが回復が早いですからね。痛み止め出せますよ」
「痛み止めください……」
ちょうどお昼ごはんだったので、食べたあともらった痛み止めを飲む。病院食は味気ないのかと思っていたけれど、確かに薄味ではあるがちゃんと定食メニューでおいしい。とは言え量が多くて、全部は食べきれなかった。
お昼過ぎに千歳が来てくれた。
『大丈夫か? 痛くないか?』
不安げに聞いてくる。
「痛いけど、看護師さんがそれでも動けって」
『鬼……』
「動いたほうが治るの早いらしいから、仕方ないよ」
『でもなあ……あ、あかりさんたちにお前の病気のこと伝えた。お前にも連絡くるかも』
「分かった」
『いるものあるか?』
「大丈夫」
千歳が帰ってしばらくして、狭山さんとおっくんのグループLINEに動きがあった。
「がんって本当ですか!?」
「金玉とっちゃうって本当!?」
はい、本当です。
「がんの方の金玉片方取りました、あとは転移さえなければ一応大丈夫です。転移さえなければ仕事にも穴開けません」
おっくんから即返事が来た。
「割とさらっと言うね!?」
「あんまりねちっこく説明する場所でもないんで」
狭山さんからも返事が来た。
「玉取っちゃうって激痛じゃありません!?」
「切った所は痛いですけど、いわゆる金的みたいな痛みはないですよ」
「そうなんですね……」
その後少し仕事の話をして、LINEを切り上げた。
転移さえなければ、これで終わり。抗がん剤の副作用なんて関係ない。
千歳を泣かせたくない、だから転移なんて本当に勘弁してくれ。




