番外編 金谷千歳と心配
手術のためにストレッチャーに乗せられてる和泉は、それだけでひどい病人みたいで、ワシは胸がぎゅっとななった。ワシは、『頑張ってな、待ってるからな』しか言えなかった。
「うん、ありがとう、悪いけど待ってて」
和泉はそう言って手術室に消えていき、ワシは病院だけで使えるPHSとかいうのを渡されて待合室で待つことになった。手術が終わったら、これで知らせてくれるんだって。
待ってる間、ワシはハッと気づいた。和泉ががんになったこと、あかりさんとか緑さんとか藤さんにも知らせないといけないんじゃないか!?
慌ててあかりさんにLINEを打つ。和泉が精巣がんになったこと。昨日入院して今手術中なこと。転移があったら抗がん剤で治療しなきゃいけないこと。
「がん!? 入院!? そんなに悪いんですか!?」
『進行が早いがんだから、すぐに取らなきゃいけないんだって』
「そ、その……取っちゃうんですか!?精巣って、つまりタマタマですよね!?」
『うん、かたっぽ取っちゃう』
「あ、片方で済むんですね……よかった」
『全然よくないよ! 手術だぞ! がんだぞ!』
「す、すみません。他の者にも伝えますので」
『閻魔様の頼み事にも関わると思うから、藤さんとかにも伝えて欲しい』
「伝えます」
やりとりが終わって、あとはもう待つしかなかった。
和泉、和泉は現代医学を信じるって言ってた。でもワシは不安しかない。1割以上は死ぬ病気、手術が必要な病気、毛が抜けるような強い薬をたくさん使わなきゃいけない病気。和泉に耐えられる? 元から痩せてるのに、もっと痩せちゃったらどうなるんだ?
ワシは涙が出て、あわてて人の目につかないところに行って、目元を押さえた。
しばらく経って、PHSが鳴った。
「手術は無事終わりました。手術室前においでください」
『はい!』
手術室に行くと、ストレッチャーに乗せられた和泉が出てくるところだった。和泉は酸素マスクを着けられてぼんやりしていて、もっと重病人に見えて、ワシはまた胸がぎゅっとした。
看護師さんが説明してくれた。
「病室に戻って、麻酔が覚めるのを待ちます。そんなにはかかりませんよ」
それから和泉の状態について説明してもらい、ワシは和泉がしゃんと目覚めるのを待った。
でも、和泉はまた寝てしまった。寝顔を見つめて、しばらく気をもんで。そしたら和泉のまつげが動いた。
『和泉! 起きたか!?』
和泉は不思議そうに辺りを見渡した。
「え、手術終わったの?」
『うん、終わった。無事に済んだって』
「そ、そうなんだ……」
和泉はまだ不思議そうに自分の体を見て、ベッドの横に目を留めた。
「え、この袋何?」
『おしっこだって。カテーテル入ってるって』
「マジか……」
そんなこと話してると、「あ、和泉さんお目覚めですか?」と看護師さんが来た。
「い、今どうなってるんでしょうか……」
看護師さんは丁寧に和泉に説明してくれて、それからワシに言った。
「あと、付き添いの方は、そろそろ面会可能時間が終わりですので」
寝てる和泉眺めて終わり!?
『え、も、もうちょっとだけ……和泉、明日も来るからな! いるものあったらLINEしろよ!』
「うん、ありがとう、病院の迷惑になっちゃうからまた明日ね」
『また明日な!』
ワシは真っ直ぐ帰ろうと思ったけど、何度も和泉を振り返ってしまった。




