一瞬だとは思わない
朝から絶食。看護師さんに局部を剃毛されて恥ずかしい思いをしたあと、血栓を予防するというストッキングを渡されて、履けと言われる。きついストッキングを素直に履いて、点滴を打たれて、ストレッチャーに横たわって手術室へ。千歳(二十歳のすがた)が来てくれていた。
『頑張ってな、待ってるからな』
「うん、ありがとう、悪いけど待ってて」
手術は1時間だそうだが、麻酔をしたりなんだりで手術室には2時間くらいいるとのこと。俺は酸素マスクをつけられた。お医者さんらしき人が俺に言う。
「じゃあ点滴に眠くなるお薬入れますからね、すぐ終わりますよ」
ね、眠くなる薬って言っても俺、かなり緊張してるんだけどな……眠くなれるかな……。
懸念した次の瞬間、目を開けると元の病室だった。
『和泉! 起きたか!?』
傍らには千歳がいた。
「え、手術終わったの?」
『うん、終わった。無事に済んだって』
「そ、そうなんだ……」
本当に一瞬で終わった……。微妙に寒気がするけど、他は何ともない……いや、何ともなってるな!? 点滴以外にも酸素マスクつけられてるし、なんかベッドの横に黄色い液の溜まった袋がついてるぞ!?
体を起こしたら、あちこち痛い。なので俺は横にもどって千歳に聞いた。
「え、この袋何?」
『おしっこだって。カテーテル入ってるって』
「マジか……」
そんなこと話してると、看護師さんが来た。
「あ、和泉さんお目覚めですか?」
「い、今どうなってるんでしょうか……」
「手術は無事終わりましたよ。点滴と尿道カテーテルと、あと手術した方の袋にですね、ドレーンつけてます。血がたまっちゃうのでね、それを抜く用に」
「結構いろいろついてますね……」
「取った睾丸は病理検査に回します。今日はそのままベッドにいてください。明日以降、血液検査結果も分かりますので、また詳しくご説明いたします」
「よろしくお願いします」
「あと、付き添いの方は、そろそろ面会可能時間が終わりですので」
『え、も、もうちょっとだけ……和泉、明日も来るからな! いるものあったらLINEしろよ!』
「うん、ありがとう、病院の迷惑になっちゃうからまた明日ね」
『また明日な!』
千歳は、何度も振り返りながら帰っていった。




