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子々孫々まで祟りたい 〜転んで祠を壊しちゃったら怨霊が子々孫々まで祟りに来たけど「俺で末代」と言ったら怨霊が困り始めて子孫を残させようと奮闘しだした件について〜  作者: zingibercolor・種・がくじゅつてきあかげ
23シーズン

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即日だとは思わない

 千歳と一緒に駅前の大きい病院へ。総合病院みたいで、朝イチだというのにかなり混んでいる。これは待つぞ。

 ……と思っていたのだが、受付で紹介状を出して待っていると、なぜかかなり早く診察室に呼ばれた。昨日と同じ触診とエコー検査をして、いったん待合室へ。その後また呼び出されて検査結果。

 白髪交じりのお医者さんは、こう言った。


「今日入院です、明日手術です」


 俺はびっくりした。


「今日!? い、いきなり入院と言っても……」

「進行の早いがんなので。5日間入院していただきます。手術同意書にご本人とご家族のサインが必要です、手術について説明しますので、奥様にもサインをお願いします」


 千歳に目をやるお医者さん。千歳は驚いたようだった。


『え!? ワシ!? えっと、ワシ和泉とはそういう仲じゃなくて、ただの同居人で……』


 お医者さんは目を瞬いた。


「え、そうなんですか……えー、じゃあ、親御さんのサインをいただけますか」

「わ、わかりました」


 そうか、父親に頼まなきゃいけないのか……必要以上に連絡取りたくないのに……いや、これこそ必要なことではあるな……。


「……父に連絡を取ります。今日入院ですね、一度荷物を取りに帰りたいんですが」

「そうしてください。先に手術について説明しますね」


 左精巣の摘出は、袋を切ってやるんじゃなくて、左鼠径部を切って行うとのことだった。精巣からお腹につながる管もがんになっている可能性があるので、それを取り除くためとのこと。


「全身麻酔です、体感では一瞬で終わりますよ」

「そうですか……」

『そうなんですか……』


 会計待ちの間に、俺は父親に電話をかけた。しばらくして、父親が電話に出た。


「おはよう、いきなりどうした」

「突然で悪いんだけど、がんになっちゃって」

「は!?」

「精巣がんで、進行が早いがんだから明日手術なんだ。家族のサインがいるんだ。急で悪いけど、サインしに来てくれないかな?」

「だ、大丈夫なのか!?」

「生存率は高いから、そこに賭けるしかない。今日来てくれる?」

「す、すぐに行く。どこの病院だ?」

「港栄台駅の近くの南部病院。今から一旦家に帰って入院の荷物取りに行くから、また病院に戻った時に落ち合えると助かる」

「わかった、今行くから、病院で待ってるから病院で待ち合わせよう」

「わかった」


 とりあえず会計を済ませ、すぐ家に向かう。家で着替えやタオル、歯磨きセット、充電器、マスクなどをまとめ、また千歳と病院へ。受付を済ませてしばらく待っていると、父親からメールが来た。


「今、病院の入り口だ」

「受付の近くの席にいる」

「わかった」


 入り口の方を見ると、父親がキョロキョロしていたので俺は手を振った。すぐ父親はこっちにやってきた。


「精巣のがん!? どこをどう手術するんだ!?」

「がんになった片方の玉を取っちゃう」

「ええ!?」

「片方は残るからさ。でも転移があったら、抗がん剤治療も必要なんだよね」

「ええ!?」


 父親は、がん患者をだまして見殺しにしてきた。だから、親の因果が子に報いたんじゃない? と言いたくなったが、さすがにそれはこらえた。

 しばらく待って、診察室に呼ばれたので父親を連れて行く。また手術の説明があって、父親は震える手でサインした。俺はホッとした。


「お父さん、これでとりあえず頼むことは終わり。あとはなんか連絡あったら対応して」

「わ、わかった」

「きっと暴走すると思うから、お母さんには言わないでね」

「わかった、上島ミツさんにもよろしく言っておく」


 上島ミツさん、占い師の体で俺の母親を矯正してくれてる人。


「それなら安心だ、絶対来させないでね」

「わかってる。あと、おばあちゃんに伝えるか?」

「足骨折してしばらく入院って言っとくよ」


 老後に心配かけたくないし、でも花の写真送れなくなるし。


「そうか……」


 父親は目を伏せ、それから千歳を見た。


「千歳さん、息子をよろしく頼みます」

『は、はい……ワシ何もできないけど……』


 俺は千歳の肩を叩いた。


「何言ってるの、千歳がいなきゃ気づけなかったんだよ?」

『それはそうだけどさ、手術とか何も役に立てないし』

「そりゃ手術はお医者さんじゃないとできないけど、でもいてくれてうれしいよ」


 父親が「あんまり長く外出してるとお母さんに勘付かれる」と言うので見送り、その後、看護師さんに病棟へ案内された。4人部屋だったが、たまたまのタイミングで俺以外に患者はいないそうだ。


「じゃあ俺入院するから。大丈夫だから、千歳は帰りな」

『もうちょっといちゃダメか?』


 不安げな千歳に、看護師さんが言った。


「感染症予防のために、面会は30分までです」

『ええ……』

「心配いらないから、帰りな?」

『明日の手術のとき来ちゃダメですか?』


 千歳が看護師さんに聞くと、「それは別の扱いですが」と前置きの後、こう言われた。


「手術の行きと帰りに付き添いはできますが、手術の帰りまで病室には入れません。手術中は病院の待合室で待っていただきます」


 千歳はごくんとつばを飲み込んだ。


『わ、わかりました』

「大丈夫だよ、明日よろしくね」

『うん……じゃあ帰るな。明日来るからな』


 千歳は何度も何度も振り返りながら帰っていった。俺も名残惜しかったけど、気持ちを切り替えようと、荷物を出してベッド周りを整えていたらまた看護師さんが来た。


「採血をします。あと、明日の手術のために夕食後下剤を飲んでいただきます」


 手術ってそんな下準備あるの!?


「手術に下剤っているんですね」

「下半身に麻酔をすると肛門の筋肉が緩むので、空にしとかないと出ちゃうんですよ」

「そんなからくりが……」


 血を取られ、時間ができたので、即日入院なことを萌木さんに伝え。


「今日入院!?」

「そうです、今日から5日間。入院中に転移ないか改めて検査して、あったら抗がん剤でまた入院だそうです。でもそっちの予定はまだ全然分からないんで、また連絡します」

「わかった、とりあえず和泉さんの今週の仕事は全部巻き取るから」

「ありがとうございます、申し訳ありません」


 俺のファンにも一応連絡した。


「精巣がんになっちゃった」

[がん!? そんな、あなたは死んでしまうのか!?]

「生存率は高いがんだから。でも進行早いがんだから明日即手術。後は転移がなければ安心なんだけど、転移があったら抗がん剤治療でまた入院」

[私に転移を消せるような力があれば……]

「そこは現代医学に頼るよ」


 よし、これで大体連絡は済んだ。あとは明日の手術を待つだけだ。

 ……待つだけなんだけど、落ち着けなかったので、俺はスマホで精巣腫瘍のことについて少し調べた。手術についてはよく説明してもらったから、転移への抗がん剤治療について調べる。そして、精巣がんの抗がん剤治療で必ず起こる副作用を見て、俺は目を剥いた。

 これは……これは絶対に千歳には言えない。自分としても割とショックだけど……千歳には、千歳には絶対に伝えられない!!

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