何か変ならすぐ診せたい
いつも起きる時間になっても、千歳は起きてこなかった。夢の中でやることに手こずってるのかな? とりあえず、代わりに朝ご飯作っとくか。
ネギとわかめと豆腐で適当におみそ汁を作る。目玉焼きを焼く。今日はうまく半熟にできた。納豆もつけて、千歳が炊いといてくれたお米をお茶碗によそって、千歳の分もよそっておこうかどうしようか、と迷っていたら、階段をドタドタ駆け下りる音がして、千歳が台所にすっ飛んできた。
『おい! ちんこ見せろ!!』
「はい!?」
『お前ちんこのがんになる! 変なとこないか見せろ!!』
「ど、どういう事……ワーッ! やめて!」
千歳が俺のズボンとパンツを引きずり下ろそうとしてくる!
「やめてってば! さっきから言ってることが支離滅裂だよ!」
ズボンを上げながら千歳に抵抗して言うと、千歳は『本当なんだってば!』と泣き出した。
『う、宇迦之御魂神様にお願いして、ワシがいなくなったらお前は好きな人とくっつけるのか夢で見に行って、そしたら、そしたらお前はどうやっても全ハゲになって死んで、そんで、がん患者さんが被る帽子被ってて、泌尿器科に通ってて』
「そ、そんな事が……」
とりあえず、台所で局部のご開陳は勘弁してもらいたい。ていうか泌尿器科なら膀胱とかの可能性もあると思うんだけど。
「落ち着いて、ちょっとトイレで確認してくるから」
『病院にも行ってくれよ!』
「わかったわかった、とりあえず確認ね」
そういうわけで俺はトイレに行き、パンツを下ろして自分の局部を確認した。見ても、特に何事もないと思うけど。
竿を触ってみても、特に痛いとか腫れてるとかはない。大丈夫だよな?
次に玉も調べてみる。こっちも特に、痛いとか腫れてるとかはない……うん?
左の玉を触ってみる。右の玉を触ってみる。もう一度左の玉を触ってみる。
……大きい。左の玉が、右の玉よりふたまわり大きく、硬い。痛みは全くないけど、明らかに左の玉のほうが大きくて硬い。これは、確実に異常じゃないか?
手を洗ってトイレから出て、俺はトイレの前でぐすぐす言いながら待ってた千歳に言った。
「泌尿器科行くよ、土曜でもやってるとこ探して診てもらう」
『やっぱりどっか変だったのか!?』
「その……ちょっと違和感というか」
『どこが悪かったんだ!?』
「い、言いにくいな……」
玉のこととか好きな人に言いにくいよ!
「その、泌尿器科はちゃんと今日行くから、冷めちゃうしまず朝ごはんにしよう」
『本当に行くな!?』
「うん、行く」
ひとまず朝ごはん。千歳は鼻をすすり、食が進まないようだった。俺は、違和感についてちゃんと話したほうが千歳は安心するのかな、と思って、口を開いた。
「その、ご飯中にする話じゃないとは思うけど、さっきちょっとさ、玉のほうが変だったんだよ」
『え!? どう変だったんだ!?』
千歳は目をまん丸くした。
「その、左のほうが右よりふたまわり大きくて、変に硬くて。特に痛いとかじゃなくて、腫れてる感じでもないんだけど、確かに大きい」
『そんな……そんながんあるのか!?』
「全然知らないけど、病院に行けばちゃんと検査してもらえると思うからさ、泌尿器科に行く」
食べたあと調べたところ、いつもワクチン打ってもらってる内科の近くに、病院ばっかり入ってるビルがあり、そこに泌尿器科があった。土曜もやっている。
「近くにやってるところ見つけた、とりあえずそこに行くよ」
『ワシも行く! 付き添いで行く!』
千歳はすがるように俺に言った。
「じゃあ、一緒に行こう」
そういうわけで、俺たちは泌尿器科に行くことになった。




