番外編 金谷千歳と名案
ワシはいろいろ考えた。それで、自分がいなかったら和泉は好きな人と結ばれるのか、まずそれを知りたくなった。
何かが違ったときの違う未来、【もしも】を知っている神様には心当たりがあった。ワシの【もしも】、死なないで二十歳になった【もしも】の姿をくれた、宇迦之御魂神様。
そういうわけで、水香さんに九さんを呼び出してもらって、ワシは平身低頭で頼み込んだ。
『頼むよ! 宇迦之御魂神様に渡りをつけてくれ! ワシがいなかったら和泉は好きな人とくっつけるのか教えてくれよ!』
「いや……そういうものでもないと思うが……」
『頼むよ!』
「仮にお主が和泉のところからいなくなったとして、ろくなことにならんぞ」
『そりゃ寂しがると思うけどさあ』
「そういうことでは……いや、そういうことじゃろうな、結局は」
九さんはため息をつき、「頼むだけ頼んでみる」と約束してくれた。
その日、宇迦之御魂神様はワシの夢に出てきてくれた。宇迦之御魂神様は、まさに女神様みたいな顔で微笑んだ。
「お前はお前の力で、自分がいなくなったときの和泉豊の【もしも】を見られるよ。一番近しい人間のことなのだから」
『本当ですか!?』
宇迦之御魂神様はワシに優しく聞いた。
「年始によくない夢を見たね?」
『はい、和泉がものすごく痩せて全部毛が抜けて……』
「あれは、何もしなかった場合の【もしも】だ」
『ええ!?』
和泉、和泉あんなことになっちゃうのか!?
「しかし、今から予知をしてそうならないよう介入すれば、未来を変えられるかもしれないよ。和束ハルにも協力してもらうといい」
『術式ですか?』
「そうだ。お前はたまに予知夢を見る程度だが、和束ハルの術式があれば間違いなく見られるだろう」
『わかりました! ありがとうございます!』
和泉の恋だけじゃなくて、健康もかかってるかもしれない。ワシは朝起きてすぐ和束ハルに事情をLINEして、頼み込んだ。
『頼む! いくらでも払う!』
「あんたにまたそんな金もらうのもな……また柚子ジャム作ったら分けてや」
『ありがとう!』
夢の術式はすぐできるって。ワシは夕方にまた和束ハルんちに行って、術式をもらった。
「まあ、きばりや」
『うん、ありがとう』
帰ってきたら、和泉が仕事の手を止めて出迎えてくれた。
「お帰り、今日はおしゃべりしてこなかったの?」
『う、うん、ちょっとやることがあって……その、今日、わし2階の別の部屋で早く寝るな』
「え、そうなの?」
和泉は不思議そうだ。
『あの、仕事ってわけじゃないんだけど、夢の世界でちょっとやることがあって、一人のほうが集中できそうだから……』
「そっか、じゃあお布団上に持っていきな。頑張ってね」
『うん』
お前の恋の行く先を見るために、お前があんなに痩せこけて全ハゲにならないように、ワシしっかり【もしも】を見てくるよ。




