怖い事態に気づかない
狭山さんちは近所だが、なにしろ寒いので、部屋でぬくぬくしながらDiscordの通話で駄弁ることが多い。
そんなわけで、Discord通話で狭山さんに最近のことを話したらびっくりされた。
「オフ会でそんな事が!?」
「焦りましたよ」
「いやでも、何事もなく終わってよかったですね、その雁ヶ音さんって人が物わかりよくなかったら、どうなってたか」
「千歳の初オフ会が台無しになってもおかしくなかったです、わかってもらえて本当によかった」
俺はため息をついた。千歳には悲しい思いをしてほしくない、雁ヶ音さんが本当の千歳をわかってくれる人で本当によかった。
狭山さんが言った。
「錦くんのことも大変でしたねえ。いや、鹿沼さんのほうがもっと大変か」
「まあ、当人同士で話をつけられたのでよかったんですけど」
そう言うと、狭山さんは意外なことを言い出した。
「僕とあかりさん、ちょっと前に、上島家の結婚渋ってる女の子を説得してくれって言われたんですけど、別にうち結婚全然渋ってなかったんで、って断ったんですよね」
「ああ、金谷さんはそう言えば若く結婚しましたよね」
「まあきっかけはお見合いですけど、なんだかんだで僕ら、最終的に駆け落ちもありえましたし」
「ほとんど恋愛結婚ですもんねえ」
峰朝日さんの騒動では、狭山さんと金谷さんが想いあってる事が露わになったようなもんだからな。金谷安吉さんが金谷あかりさんと峰朝日さんとの結婚を強行するようだったら、狭山さんは本当に金谷さんを連れて遠くに行ってしまったかもしれない。
狭山さんはぼやいた。
「確かに子ども作ること考えると結婚年齢にリミットはありますけど、そんなに急ぐこともないと思うんですよね。強要されたら可能性がある縁でも結ばれないと思うし」
「見守るのが一番ですよね、ほっとけば、結婚までいかなくとも共闘できることがあるし」
「そうそう」
俺たちはのんきに話していたが、多分、俺たちが男でいい年をしてるからのんきに話せたことだった。俺たちは気づかなかった。若い女の子が結婚を強要されるということが、ひどく危険でグロテスクな事態に進行し得ることに。




