番外編 雁ヶ音こと島初音とちっち
ちっちさんとは、今まで話さなかったのがもったいないくらい話してる。
「やっぱ長谷川あかりのレシピですよね!」
『うちリュウジのレシピも! 同居人が揚げ物ダメだからリュウジの揚げない唐揚げが必須で』
「あっ前に上げてた唐揚げそれですか?」
『そうです!』
ちっちさんは同居人さんのごはんも毎日作ってえらいよなあ、私は自分の好き放題に作れる一人自炊じゃないと無理。
話は、料理だけじゃなく推してる本や漫画にも及んだ。ちっちさんは狭山誉の小説を作者買いしてるらしい。唐和開港綺譚は漢方の話だと思ってたけど、薬膳レシピも載ってるそうなので買って読んで、面白かった。私はちっちさんに、きのう何食べた? を勧めた。あれ絶対レシピ帳になるよね。
ちっちさんはBLという言葉の意味を知らなくて、きのう何食べた? を読んで『このふたりって本当に恋人同士なんですか? 仲のいい友達じゃなくて?』と聞いてきた。
「がっつり恋人同士ですね」
『へえー、そうなんですね』
同性愛がピンときてない人なのかなと思ったけど、次に来た返事を見るとちょっと違うみたいだった。
『こないだ、仲良くても恋愛になるかは別、みたいなこと教えてもらったから、恋愛じゃないのかと思って』
「でもちっちさんも同居人さんと仲良しでしょう?」
『仲はいいけど恋人じゃないです。まあ友達に近いのかなあ、でも同居人です」
「あ、そうなんですか、すみません!」
えっ、すっかり彼氏か旦那さんだと思ってた! 違うんだ!
そうだよね、仲良くても恋愛ではない、は普通にあるよね。視野が狭かったのは私だった……。
ちっちさんは同居人さんに不満があるらしい。
『同居人には、早くいい人と結婚して子供作って欲しいんですけど、なんか本人ぐだぐだ言って全然婚活しないんです』
「まあ、今の生活が心地良いならなかなか踏み切れないですよね」
私も、若いころから早く結婚して早く子供作れの圧が強かった。高3の時に、国立大学受かったら一人暮らしさせてくれと親を説き伏せて受かったので、それからずっと一人暮らししてる。別に一生独身を貫くというほどじゃないけど、一人暮らしの自由を知ると、なかなか誰かと暮らす気持ちがわかない。
『今の生活は、同居人は幸せみたいです。だから婚活しないのかなあ、でも不幸せにはしたくないしなあ』
「ちっちさんも今の暮らし幸せでしょ? わざわざ不幸になりに行くことないですよ」
『そうですね。でも同居人が結婚してくれたらもっとうれしいんだけどなあ』
「でも、同居人さんが結婚したらさすがに同居解消でしょう?」
『ワシは姑みたいなもんだから同居はします。今は共働きが多いから、ワシが家事すれば奥さんには好きに働いてもらえるし』
「へえー」
うーん、ちっちさんって意外と年配なのかな? でも食の好みは若いんだよね……。
まあ、今度オフ会で会えばその辺はわかるか!




