ホントは話しかけてみたい
千歳が、夕飯にミネストローネと豚の生姜焼きと菜の花のおひたしを並べて言った。
『今日は彩りよくできたから、写真撮って投稿する』
「misskey.ioとBluesky?」
『うん! みんないっぱいリアクションといいねくれるから』
千歳は写真を撮りながら答えた。
撮った写真を見せてもらうと、料理の奥に俺の皿と手が写ってる。これは見る人が見たら匂わせだぞ……? いや、ご飯写真共有する人たちにそんなん興味ある人がいるとは思えないけど。
「ピースでもすりゃよかったかな」
『じゃあ今度そうしろ、ワシもう食いたい』
「じゃあ、頂きます」
『頂きます!』
食べながら、千歳が言った。
『あのな、ずっと前からmisskeyとBluesky両方でワシをフォローしてくれてる人がいるんだ、こっちもフォローし返してるんだ』
「ご飯関連の人?」
『うん、雁ヶ音って人』
「やりとりはするの?」
『うーん、したいけどきっかけが見つからなくてさ……お互いリアクションといいねはつけ合うんだけどさ……』
千歳は悩むようだ。
「まあ、何とかきっかけ見つけてリプしなよ、相手喜ぶよ」
『そうかなあ、なんかいきなり喋りだしたとか思わないかなあ』
千歳はくねくねしだし、俺は思わず笑ってしまった。
「相互フォローの時点でそれはないよ、大丈夫」
千歳の投稿内容は、ご飯以外だと大掃除大変だったとか物価が高いとかうっかり丸一日寝て大変だったとかで、書いてまずいことは書いてない……と思う。普通の人のなんてことない日常だ。
『じゃあ……今日雁ヶ音さんがご飯投稿したら『いつも見てます! いっつもおいしそうですね!』って言う』
「それがいいよ、そうしなよ」
スマホ使えなかった千歳がSNSでの人との交流に悩むようになるなんてなあ、隔世の感がある。願わくば、雁ヶ音さんがまともな人でありますように。
まともな人……まともな人だよな? まともじゃなかったらどうしよう?
千歳には悪いと思ったが、夕飯後、俺は雁ヶ音さんのアカウントを千歳のアカウントから辿った。どういう人なのか知っておきたかったから。Blueskyとmisskey.ioのアカウントを合わせてチェックする。
料理好きな人で、ほぼ毎日自炊チャンネルと青空ごはん部に写真をあげている。千歳よりはmisskeyでの交流に活動的なようで、人とリプ飛ばしあったりオフ会に参加したりもしている。おそらくは女性、ブラッディな日とかぼかしてはいるが生理で頭痛がするみたいな内容をポストしていることがあるから。
全体的に見て、一人暮らしの社会人。それでmisskeyにいるなら、年齢は20から30代の可能性が高い。Blueskyだけなら40とか50の可能性も考慮したけど。
まあ大丈夫な人っぽいな、千歳と仲良くなってくれたらいいけど。
すると、misskeyのほうの雁ヶ音さんのアカウントに新規ノートがあった。なんだろうと見てみると、ちっちアカウント(千歳のアカウント)への返信で、「ありがとうございます! ちっちさんのもいつもすごくおいしそうです!」と書いてあった。千歳、勇気出してリプしたのか。えらいぞ。
こたつの向かい側にいる千歳が『雁ヶ音さんに話しかけちゃった! 返信もらえた!』ときゃっきゃしているので、俺は「よかったね」と声をかけた。
その後も、『ずっとお話したかったんです』「私もです!」と会話のリレーが続く。
千歳に対して過保護すぎたかな。千歳はもう、大丈夫な人を選んで付き合える程度には、大人なのかもしれない。




