番外編 金谷千歳と仲良し
和泉があかりさんに事の次第を話してくれて、ワシも日報でも詳しく報告するって約束して。何とか朝ご飯にした。カブの味噌汁は作る気になれなかったから、ネギとワカメの味噌汁。
その味噌汁をすすりながら、和泉と話した。
『危なかったよなあ、この家の中には入ってこれないと思ってたけど』
家建てる時にお守りの術式は仕込んだけど、それじゃ足りなかったみたいだ。
「もっと守りを強固にしなきゃね、和束ハルさんに頼めないかな?」
『そりゃいいや、日報書き終わったら頼みに行こう』
「お願い、俺もうループは嫌だ」
朝ごはんのあと、日報書いて和泉にチェックしてもらってあかりさんに送る。それから和束ハルにLINEで『頼みがあるんだけどいいか?』と何があったか書いて送ったら「うちで使ってるの分けるわ」と返事が来た。ワシは『取りに行く』と返事して、和束ハルんちに行った。
家に行くと、和束ハルはすぐ術式を書いた紙をわさわさくれた。
「うちの術式信用できんなら、上島家か峰家に見てもろたほうがええと思うけど」
『いいよ、今あんたそんなことしないだろ』
「まあな。うち、あんたになんかしたら高千穂さんを不老不死にするための霊力もらえへんもん」
『だよな。しっかし、まいった! 毎日同じ日なんて耐えられないよ!』
「あー、それな」
和束ハルは考えるように顎に手を当てた。
「あれ、多分和泉豊を誘惑したつもりだったんやろな」
『誘惑!?』
「最高に心地いい世界の中に入れたつもりだったんやろと思うんや、うちの母親は」
『はあ!?』
ワシが目をまんまるくすると、和束ハルはため息まじりに言った。
「自分にとってええもんは他人にとっても絶対にええもんと思っとるんや、美枝と同じやな」
『和泉は嫌だったみたいだけど』
「そういうのがわからへんのや、あの女は」
『ふうん……』
よくわかんないけど、和束みやびの娘の言うことなら間違ってないのかもしれない。
とりあえず家に帰って、術式に霊力を込めて指定された場所に仕込む。和泉も仕込むのを手伝ってくれた。
「ドアと窓か、開口部には必ず仕込む感じかな」
『多めにもらっといてよかった』
結構霊力使ったから腹減った。お昼は鮭チャーハンと中華風レタススープを作って、ワシは山盛りで食べることにした。
食べながら、和束ハルが言ってたことを和泉になんとなく話す。
『和束みやび的にはさ、毎日同じ日って最高らしくてさ、だからそういう最高の世界を見せてお前を誘惑しようとしてたのかもって』
「最悪だったよ……」
和泉はげっそりした顔だった。
「仕事休みの日がずっと続くんであっても、嫌だったね」
『具体的にどの辺がヤだった?』
「そうだねえ、時間が進まなかったら千歳が楽しみにしてるチョコミント新作が出ないし……」
和泉はレタススープを飲んで、それから少しためらって言った。
「その……時間が進めば、俺はもしかしたらもっと千歳と仲良くなれるかもしれないのに、今のままで止まるのは嫌だなって」
『ワシと!?』
和泉はだいぶ照れた顔でワシを見た。
「だから、その、これからもよろしく」
『そっか……』
そっかあ、今もすごく仲良しだと思うけど、もっと仲良しになれるかもしれないのか。
ワシは微笑んだ。
『ま、仲良くやろう』
「うん」
和泉は笑った。そしてワシは思いついた。
『そうだ、時間止まっちゃったら、お前が好きな人に告白したり付き合ったりもできないな』
和泉はギクッとした。
「うっ、ま、まあ、そう」
『時間進んでるんだから、早く告白して結婚して子孫残せよ』
和泉は苦笑して、何も言わなかった。




