長命種だから知り合いたい
千歳はきょとんとした。
『え、いいけど……なんで?』
「理由はね、久慈から話したほうがいいけれど」
鍋島さんは久慈さんを見やった。
「蒼坊、どうする。打ち明けて知り合いになったほうがいいよ?」
ユキさんがお茶を持ってきた。
「どうぞ! 久慈さん、諦めつきました?」
「……言うよ!」
久慈さんは観念したような顔をし、目に手を当てた。手を離すと、そこには蒼い瞳に縦の瞳孔。俺は驚いた。
「え!? 久慈さんも猫又なんです!?」
「う、うん……」
千歳は全然驚いてなかった。
『あっ、やっぱり』
「わかってたんだ、千歳……」
「まあ、普通の人間が猫又の長と普通に知り合いな訳ないよなって」
な、なるほど。それは確かにそう。
久慈さんは俺を見た。俺の反応を恐れるような表情。
「驚きました?」
「驚きましたけど、身近にいた驚きというか……今まで化け狐とか化け狸とか吸血鬼に会ってましたけど、以前から知ってる人がそうって言うのは初めてで」
「あー、そっかあ。うん、猫になれる以外は普通に暮らしてる普通の人間だから。ネギも食べれるし」
そういや、ネギは猫に毒って狭山さんが言ってたな。
久慈さんは千歳に話しかけた。
「その、私一応今は見た目通りの年齢なんですけど……猫又な以上、人の寿命を超えて生きるんで、お互い助け合うために、人の寿命を超えてる人となるべく知り合ったほうがいいと言われていて……」
『それがワシ?』
「そうです」
頷く久慈さんに、鍋島さんが言った。
「仲良くしてもらいなさい、蒼坊」
『じゃあ仲良し! LINE交換しよう』
千歳はニコニコしてスマホを取り出し、久慈さんは千歳の歓迎的な態度に逆に戸惑うようだった。
「いいんですか?」
『だって和泉が世話になってるし』
「じゃ、じゃあ、とりあえずLINE交換しましょう」
千歳と久慈さんがLINE交換してる間、鍋島さんは微笑を浮かべて2人を眺めていたが、やがて俺に目を向けた。
「さて、頼みを聞いてもらったから、ちょっとした情報を話そうかね」
「お聞かせ願えますか?」
「朝霧家本家に、猫又になった猫がいてね。その子が言うんだ、30年前から20年前にかけて、和束みやびが何度か訪れていたとね」
「朝霧家に? 何をしていたんでしょうか?」
「古文書を閲覧していた。ここまでは朝霧家も把握していると思うが、我々が知っていることはもう少し深い。和束みやびは、朝霧の忌み子について片っ端から資料を集めていたんだ」
LINE交換を終えた千歳が驚きの声を上げた。
『ワシ!?』
「朝霧の忌み子の生まれ、朝霧の忌み子がどのように育ったか、そしてどう怨霊になり、他の怨霊たちを溶け込ませるに至ったか、それらに関連する資料すべて、をね」
俺は鍋島さんに聞いた。
「なんでそんなことを」
「まあ私は思うんだがね、和束みやびの企みとしては、朝霧の忌み子みたいな霊を手に入れるのが理想だろうとね」
「……あっ」
千歳はいろんな霊を内包できる存在で……アタリの子もそう。和束みやびは、他にも霊力の高い9つの魂(霊)を所有していた。
「和束みやびは……アタリの子を千歳みたいに仕上げたいとか?」
「そうじゃないかと思っているけどね」
『ワシみたいに!?』
俺は千歳に言った。
「千歳はたくさんの霊が集まったすごく強い怨霊だから、和束みやびはアタリの子と魂9つで、千歳と同じような怨霊を作りたいんじゃないかなって」
千歳はものすごく嫌そうな顔をした。
『うわー……やな奴ぅ……』
俺は、大きくため息をついた。
「じゃあ、アタリの子、やっぱり閉じ込めて育てられてるのか……」
地下室の座敷牢に閉じ込められて、ろくに人にも会えず? 千歳みたいに寂しい思いをして? まだおむつも取れてない子が?
千歳は目を伏せた。
『ワシみたいに育てられてるのか、無理やり……』
鍋島さんは千歳をなだめるように言った。
「まあ、予想だけれどね。でもあなたの生い立ちを参考にしているのは間違いないと思うよ?」
『うん……』
俺は千歳に話しかけた。
「アタリの子、絶対見つけようね。手がかり何もないけど……魂集めてれば、きっと何かしらあっちに動きがあると思うから」
千歳みたいな思いをする子、絶対に助けなきゃいけない。
千歳は決意を秘めた顔で頷いた。
『うん、絶対助けてやる』




