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番外編 久慈蒼の煩悶
恩師の鍋島さんから電話で説得されている。品の良い老人の声だが、後ろにある圧がすごくて俺は気圧されている。
恩師は言った。
「いいから、和泉さんと言う人にお願いして2人とも連れてきなさい」
「いや、でも部下ってだけですし……」
「本丸は和泉さんじゃないって、わかっているだろう?」
「それはそうですけど……」
「金谷千歳さんとは知り合っておいたほうがいいよ、蒼坊。お前の将来のためだ」
「でも……」
「でももヘチマもない。嫌なら、お前のいない所で2人にお前のことを頼んでしまうよ」
そ、そんな、自分の生まれのことを俺のいない場で勝手に話されるなんて……嫌だ!!
俺は降参した。
「……連れていきます……俺もそっち行きます」
「よろしい。では、年明けに期待しているよ」
「はい……」
電話が切れ、俺は天を仰いだ。
鍋島さんひどいよ。俺の生まれのこと、知ってる人は親だけだよ。俺が、自分から誰にも話してないって知ってるくせにさ。




