番外編 金谷千歳と長寿
本白神社で藤さんや緑さんたちに現状報告する会があった。ワシ週報とか日報とか書いてるけど、たまには顔合わせたほうがいいって言われて。
と言っても、みんなで週報の内容の確認して、藤さんにそれ関連で多少質問されだけで済んだ。
「怨霊くんは、魂一体に対峙したときどれくらい大変?」
『そんなに大変じゃない。でも封印した日はいっぱい食べていっぱい寝たい』
和泉が補足するように言った。
「魂を見つけた日はたしかによく食べますね。早く寝ちゃうし」
「ふーん。完全にいつも通りとは行かないか。じゃあ複数同時に来たら流石に手こずるよね……」
『そういう時が和束ハルの強化術式の使いどころだなって』
「まあそうだね……気をつけて」
話が一段落して、緑さんがワシに笑いかけた。
「本当にお疲れ様ね、また一緒にアフタヌーンティー行こうね」
『うん!』
緑さんと後でLINEで予定すり合わせようって約束して、会はおしまいになり、ワシと和泉は社務所を出た。
和泉が本殿の方を見ながら言った。
「ここちょいちょい来るけど、ここんとこちゃんとお参りしてないね、そう言えば」
『してくか?』
「してこう」
本殿に向かい、でかい鈴を鳴らして二礼二拍一礼。
『何お願いした?』
「前と同じだよ、家内安全商売繁盛」
『もうちょっと色気出せよ』
ワシは和泉をどついた。和泉は苦笑して言った。
「色気出すにも、基礎がしっかりしてないとじゃん」
『まあ、それもそうか』
本殿から鳥居へ歩いていると、掃除してる人が狛犬周りの掃除に取り掛かってた。水香さんだけじゃ管理の手、足りないもんな。
近くを通りかかったから、ワシはその人に挨拶した。
『こんにちは!』
「ああ、こんにちは! 緑さんの方の会はお済みですか?」
「うん!」
和泉も「こんにちは」と挨拶して、それから狛犬の台に書かれた文字を見て、達筆すぎたのか首を傾げ、それから掃除の人に聞いた。
「この狛犬、何か言われあるんですか?」
「一応、この狛犬なでると長生きできるって言われてるんですよ。大したことじゃないですけど」
「へえー」
和泉が何のためらいもなく手を伸ばして狛犬をなでたので、ワシはびっくりして固まった。
『お前、長生きしたいのか……』
「え、うん……できれば」
和泉はちょっと驚いて頷いた。ワシは視界がうるむのを感じた。
『そっかあ、そう思うようになったのかあ、よかった……』
「えっ何、千歳俺早死にすると思ってたの!?」
『だって! 会ったばっかの頃はずっと顔色悪かったし、お前自分が生まれてこなきゃよかったとか思ってたし、その後も自分の命省みないし! お前その辺不安なんだよ!』
和泉が、ふっといなくなっちゃうんじゃないか、って思ってた時期があった。和泉が「生まれてこなきゃよかった」と思ってたと知った時、ワシもワシの中身もたくさん辛いことあったけど、そこまで思い詰める奴はいなかったから、本当にびっくりした。和泉はどんなに辛かったんだろうって思った。その後、和泉は身を挺して、ワシの代わりに死ぬような痛みを経験したし、ワシのために命を捨てようとしたし……。
和泉は慌てた。
「そ、それはごめん、でも長生きしたいよ今は」
『そんならいいけどさあ』
ワシは鼻をすすり、安心してため息をついた。
『百まで生かしてやるからな』
「それはありがたい」
和泉は、てらいのない笑顔で笑った。




