そんなに注目されたくない
11月三連休の初日。千歳とのんびりしていると、玄関のチャイムがけたたましく連打された。
何事かとインターホンのカメラを見ると、金谷蒼風さんだった。彼は血相を変えて言った。
「大変! 大変です!」
「ど、どうしました!?」
『何だ!?』
「そちらに吸血鬼は来ていませんか!?」
「吸血鬼?」
『吸血鬼?』
何事?
とりあえず、今日は誰も来客していない。
「その、今日は誰も来てませんけど」
詳しく説明してもらうために玄関を開けると、彼は冷や汗を拭きながら言った。
「すべての吸血鬼の祖にして王が、突然日本に来まして。それでお二人に会いたがっていて」
「なんでそんな人が?」
『何の用だ?』
「和束ハルの件、ほっといたら倍々ゲームで世界中が壊れてたんですよ。それが今更海外に広まりまして。和束ハルを止めたのがユニコーン騙したのと同一人物って言ったら、一目見たいと来ちゃいまして、もう誰も止められなくて」
千歳は困惑している。
『えーと、会えって言われたら会うけど、なんか怖いやつなのか?』
「一見フレンドリーですけど、絶対裏があるんですよ! 確かにお二人とは会いたいでしょうけど、確実に何か企んで……」
その時、バサバサッと音がしてあたりが暗くなった。空を見上げると、無数のコウモリが日光を隠していた。
空から声が降ってきた。
「いやー、道案内ありがとう! 君ならすっ飛んでいくと思ったから助かったよ!」
コウモリが集まって、黒衣の男性の姿になる。西洋人らしく背が高くガッシリとしていて、顔はいっそ青ざめて見えるくらい白く、唇だけが血のように赤い。
その唇が微笑んだ。
「こんにちは、お二人共! 君たちがハル・ワヅカを止めた二人かな?」




