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大事な人に慰められたい
とっとと女装を解いて、家までの帰り道。俺は千歳にユニコーンにされたことを話した。千歳はドン引きしていた。
『そんな目に遭ったのか!?』
「うん……あんなこと千歳にさせるわけにいかないから、俺でまだよかったと思ってるけど……」
『そっか……ありがとう』
千歳は目を伏せ、それから空中にしゅっしゅっとパンチしだした。
『やっぱ殴りたいな、ユニコーンのやつ』
「抑えて抑えて」
俺は千歳を制した。ユニコーンを殴りたいと思う気持ちはうれしいが、実際やると迷惑かかる人が多すぎる。
千歳は俺を見た。
『お前かわいそうに、お前も殴ってやりたかったんじゃないか?』
「キモかったけど、バレませんようにで頭がいっぱいだったよ。ラクトン香水つけてなかったらどうなってたか」
『匂いフェチなんだな、ユニコーンって』
「まあ動物は鼻いいからね」
『お前、本当にかわいそうになあ……』
千歳は俺の背中をなでた。
大事な人に触られるのは、こんなに安らぐものなんだよな。ユニコーンに触られるのとは、大違いだ。




