あなたじゃないと攻略できない
金谷牡丹さん(金谷あかりさんのお母さんで千歳の戸籍上のお母さん)に懐石料理屋で話しをしたいと求められた。千歳と行ったら、牡丹さんから土下座の勢いで協力を求められた。
「どうかお願いできませんか、助けると思って!」
緑さんもいる。
「大人に頼めればそれが一番なんです!」
峰朝日さんもなぜかいて、身を乗り出して言った。
「どうかお願いします! 女装指導の人間は手配するので!」
手配っていうかあんた自身だろ! なんでこんなことに……。
とりあえず、俺は牡丹さんに聞いてみた。
「その、具体的に何をするんですか?」
「引き受けてくださいますか!?」
「いやその、具体的なことを聞いてから決めます」
ユニコーンに突き殺されたくないし!
緑さんがとりなすように言った。
「一応、和泉様なら最悪の事態にならないからでもあるんです。宇迦之御魂神様と閻魔大王様の加護があるから、聖獣のひと突きくらい防げるはず」
俺の隣の千歳が『あ、そこは大丈夫なんだ』と安心したように言った。俺も少し安心した。
「それは、他の人よりは危険はなさそうですけど……」
牡丹さんが言う。
「具体的には、ユニコーンのいる空間に転移して、英語で丁重に角の提供を求めて、了承してもらったら角をもらうという感じです」
「英語ですか……話すのはちょっと自信ないんですが」
読むならともかく、話すとなると別なんだよなあ。
「うちの次男と嫁が教えます。二人とも通訳なので」
「英語の聞き取りも自信ないんですが」
「ユニコーンはテレパシーで意思を伝えてきます。こちらからしゃべるときのみ英語が必要です」
「そうなんですか……うーん……」
気が進まないけど、これ、断ったら千歳に話が行く……千歳のためなら、やるしかない……。
緑さんが言った。
「お金はお支払いします、それ用の予算は一千万円あるので」
一千万!?
「い、いやそこまでもらうわけには」
ビビるだろ! 藤さんから百万もらったときも驚いたのに!
「それだけの価値があるんです」
緑さんはいい切った。千歳も、もらうのに賛成のようだ。
『そんなにもらえるならいいじゃん、危なくないんだしもらっとけよ』
「そ、そうだねえ……」
一応、お金があるならやりたいことはある。それは千歳が買った家を俺と千歳の共同名義にすること。3000万弱くらいのお金が必要なわけで、その元手は欲しい。
「……やります」
思い切って言うと、一同は大喜びした。
「すぐ必要な人員を手配します!」
朝日さんがまた身を乗り出した。
「万全を期すために、さらに女装勉強しましょう!」
なんで趣味でもないのにさらに学ばなきゃいけないんだよ! そりゃユニコーンは騙さないといけないけどさ!
俺が渋い顔をしたのがわかったのか、千歳が俺の肩を叩いた。
『大丈夫だって、お前女装似合うよ』
「そう言われて嬉しいタイプの人間じゃないんだよな、俺」
千歳のためとは言え、素敵なお姉さんになるより、千歳に惚れられるような男になりたいよな……。




