一緒に函館目指したい
北海道の函館に仕事で行くことになったので、千歳と打ち合わせしている。
「完全に冬服で行こうね。あっちはこっちの冬だよ」
『うん』
「前日入りで、羽田から飛行機で1時間20分、次の日レンタカーで取材って感じ」
千歳ははしゃいだ。
『ワシ飛行機乗るの初めてだ!』
「そりゃあよかった」
『仕事、何時に終わる?』
「予定通りに行けば、夕方の四時くらい。車で待っててよ」
『うん。あのさ、仕事終わったら、北海道の寿司とか食いたくないか?』
「いいねえ、海産物。じゃお寿司屋さん探しとこう」
しかし、仕事終わりが16時とするとちょっと夕飯には早いな。飛行機の時間にも余裕あるし。
函館空港から函館駅にある宿を取材する仕事だから、その辺に名物があったらそこで時間潰すのはどうだろう?
調べてみたら、紅葉の名所があった。山とつながった大公園だ。ライトアップされてるみたいだから、夜でも映えるだろう。よし、ここにしよう。
千歳に提案したら、すごく喜んでくれた。
『行こう! ワシ写真撮りたい!』
「じゃ、なるべく早く仕事済ませられるようにしよう」
そういう訳で、函館に行く日になった。普段空港なんて行かないので、羽田空港の広さに圧倒されてしまう。飛行機に乗ったら乗ったで、千歳(二十歳のすがた)はドキドキしているようだ。
『飛ぶのってどんな感じだ?』
「滑走路を走るけど、タイヤの振動がいきなり消えて、その時が飛んだ時だよ」
『わあー!』
目をキラキラさせる千歳。
「て言っても、俺も修学旅行の時しか乗ったことないけど」
『どこ行ったんだ?』
「沖縄」
『いいなあ、落ち着いたらワシも行ってみたい』
「一緒に行こうよ、落ち着いたら」
『うん!』
俺たちが空弁に舌鼓を打ってるうちに、飛行機は函館まで飛んだ。函館空港も広いな!?
すぐホテルに行き、明日に備えてしっかり眠る。大自然の脅威なんて、知るべくもなかった。