表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

844/849

そばにいなきゃ祟れない

 三連休最後の日、九さんが家を訪ねてきた。


「仲良くやっておるか?」

『仲良しだぞ!』


 千歳は元気に言い、俺は苦笑して頭を下げた。


「おかげさまで、仲良くやっております」


 俺の望む仲良しではないけど!

 千歳がお茶とお菓子を出してくれて、俺たちは3人でなんやかんや話した。

 九さんは言った。


「前はすまなかったのう、休ませてやるつもりが荒事に行き当たって」


 前に、九さんの仲介で深山さんの家に泊まらせてもらったが、そこで探してる魂に行き当たったことだろう。でも九さんのせいじゃないので、俺は首を横に振った。


「いえ、なんてことないですよ」

『別に大丈夫だよ』

「そうか。最近はどうじゃ?」

『んー、色々あって魂2人確保して……今そこにいる』


 千歳は自身の棚の上を指さした。液体ミルクとともに、閻魔大王様からもらった小箱が置いてある。


「おお、供え物をしてやっとるのか」

『うん、かわいそうだから』

「そうじゃのう……」


 九さんは嘆息した。

 俺は口を開いた。


「いろいろありますが、危険な目には遭っていないですね。普通に暮らしています」

『うん、遊びにも行ける! 観音崎行ったんだ!』

「ほう、何をしてきたんじゃ?」

『ゴジラの足形見てー、コスモス畑の写真撮ってー、ウニとヒトデさわってー、海見てー、あと美術館』

「ほー、二人で回ったのか」

『うん』


 九さんは苦笑し、冗談めかして言った。


「そんなに仲が良いなら、もう祟るのはよしたらどうじゃ?」


 しかし、千歳には冗談ではなかったらしい。愕然としていた。


『なっ、なんでそんなひどいこと言うんだ!』

「えっ、すまん」


 九さんは驚いて反射的に謝った。千歳は眉をつり上げて叫んだ。


『ワシは和泉んところにずっといるんだ! ずっと祟るんだ! 絶対やめない! やめないからな!』


 ち、千歳の逆鱗に触れたか!?

 俺は慌てて千歳をなだめた。


「落ち着いて千歳、俺も千歳にずっといてほしいよ、いてくれればそれが祟りでも何でもいいから」

『本当か?』

「本当」


 九さんは頭を下げた。


「すまんの、なんか悪いこと言ったようじゃの」

『とにかく、ワシは絶対祟るのやめない』


 九さんは微笑んだ。


「そうかそうか、お主にとって和泉を祟るというのは、ずっとそばにいるということなのじゃな」

『ずっとそばにいなきゃ、子々孫々まで祟れないだろ?』


 千歳は当然のように言った。


「仮に子供できたら、どう祟るんじゃ?」

『そりゃあ、七代以上続くように、面倒見て、世話して、立派に育てて……』


 俺はずっこけそうになった。


「それ祟りなの?」

『そうだよ!』


 まあ、千歳がそう主張するなら祟りでいいか。千歳がずっと一緒にいてくれることが祟りなら、それこそ千年祟られたっていい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ