祝ってくれてありがたい
なんとか本免に合格し、免許が取れた。運転で緊張しまくって、すごく疲れた。
手続きを終え、帰途につく。空から見守ってるという千歳とは、家の前で落ち合うことになっている。
玄関の前に着くと、背中をたたかれ、振り向くと千歳がいた。
『お疲れ!』
「ありがとう、何とか免許取れた」
家に入ると、千歳は玄関先で何かを手に取った。
『ちょっとそこで待ってろ』
「何?」
すると、千歳はクラッカーを手にし、俺に向かってパンと爆発させた。
色テープを被ってびっくりしてる俺に、千歳はにこにこして言った。
『免許取得おめでとーっ!』
「えっ、えっ、わざわざ用意してくれてたの!?」
わざわざクラッカーを!?
千歳は色テープをくるくる巻き取りつつ言った。
『ちょっと前にな、100均のだけど』
「うわーっ、ありがとう」
『夕飯ちょっといいもん作るよ、お祝いだ』
「え、いいの?」
『だって、お前技能講習だいぶ苦労してたもん、ちょっとくらい祝ったっていいだろ』
「ありがとう……」
確かに結構苦労したけど、会社都合で取るものだったから、会社を待たせてることに焦るばかりで、免許取って祝う発想がなかった。
夕飯にはアクアパッツァとパエリアが出て、俺はありがたくいただいた。
「おいしいよ、本当おいしい」
千歳は自慢げに言った。
『ワシの腕前、ちょっとしたもんだろ?』
「すごい腕前だよ」
料理自体すごくおいしいけど、俺を思って俺のために作ってくれたってことが、最大の調味料だよ。