絶対じゃなきゃダメらしい
千歳は大粒の涙をこぼし始めた。
『友達も知り合いもみんなおかしくなっちゃった! こんな術かからなきゃよかった!』
うわーっ! そうか千歳的にはショックだったのか、友達がいきなり自分に迫り始めて!
俺はなんとか千歳を慰めようと、千歳の背中をなでた。
「大丈夫、大丈夫だよ、少し距離離れたらみんな落ち着いたし、みんな友達として千歳のことが好きだよ」
背中をなでて、頭もなでて、おれは千歳をなだめつづけたが、千歳の涙はおさまらなかった。
『おっ、お前が大丈夫でよかった、ワシ、お前がおかしくなってたらどうなってたか』
ごめん実は大丈夫じゃないんだよ。俺は心底千歳にイカれてて、でもそれが普通だからいつもと変わらなく見えるだけなんだよ!
「落ち着いて、俺はとりあえず大丈夫だから」
『とりあえずじゃやだっ! 絶対大丈夫じゃないとやだっ!』
「絶対大丈夫だから!」
そう言ってなで続けていると、千歳はなんとか泣き止んだ。
そうか、俺は大丈夫じゃなきゃいけないのか……。
ああ、俺が千歳に恋愛感情を持ってると知られたら、俺は多分千歳に大丈夫じゃない相手とみなされるんだろうな……。