番外編 金谷千歳とモテモテ
VRchatの用が済んだから、和束ハルんちにパソコンとゴーグルを返しに行った。
『ありがとな! 面白かった』
「役に立ったか?」
『うん、和泉のファンに会えたし』
またお茶とお菓子をご馳走になって、喜んで食べていたら、ふとテーブルに積んである和紙に目がとまった。
『これ術式か? あんたも大変だな』
なんの気もなしに和紙に触れると、和束ハルが叫んだ。
「あっ、あかん!!」
『えっ、ごめん』
手を引っ込めると、和束ハルは、何故かみるみるうちに顔を真っ赤にし、うずくまってしまった。
「あかん……あかん……うちには高千穂さんが……」
『えっ何!? どうしたんだ!?』
「み、魅了の術式なんや、それ……」
『魅了!?』
「うちに使こて高千穂さん限定に魅了しよ思て……あかん……相手をまだ限定しとらんかったから……」
『待ってよくわかんない、何がどうなってるんだ!?』
「あ、あんたは……不特定多数にモテモテになる……」
『モテモテになる!?』
和束ハルはうめいた。
「あー! あかん! うちには高千穂さんが!」
『ワシあんたにモテてるのか!?』
「あかん、うちが悪かった、そんなところに術式置いとくなんて、すまんいったん帰って、解除の術式作るから!」
『う、うん、どれくらいかかる?』
「結構かかる……1週間で作れたらええ方や……」
『マジかあ……うん、とりあえず帰るよ』
「すまん……」
そういう訳で帰ったんだけど、何故か和泉は普通に出迎えてくれた。
「お帰り、なんかごちそうになった?」
『う、うん……なんでお前普通なんだ?』
「?」
不思議そうにする和泉に、ワシはさっきのことを話した。
「不特定多数にモテモテ!?」
『でもお前普通だから、なんでだろうと思って』
「それは……」
和泉はつぶやいて、そして何かに思い当たった顔をした。
『え、なんか原因わかったか?』
「あっいやその……俺、宇迦之御魂神様とか閻魔大王様に守ってもらってるから、それじゃないかな?」
『あっ、そっかあ』
じゃあ和泉は大丈夫なんだ!
あっ、でも明日星野さんに遠くの業務スーパー連れてってもらう約束してる……どうしよう。
うーん、星野さん、恋愛でときめく歳じゃないと思うし、大丈夫かな?