ぞっこんだから断りたい
朝ごはんの時、俺は千歳に、俺のファンから伝えられたことを話した。
『インターネット付喪神ー!?』
「一応、俺のファンはそう言う自認らしい。本当かどうか知らないけど」
『いやー、でも、ありえない話じゃないな……』
千歳はみそ汁をすすった。
「そうなの!?」
『長年使われて、人の気持ちが染み込んだものって意外と付喪神になるからさ』
「マジかあ……」
『なんか他にも話したのか?』
「プロポーズされた」
『は!?』
千歳は素っ頓狂な声を上げた。
「なんかね、相手は、俺は性格が良くて良識があるって言ってて。そういう存在と自分を融合させたいから、結婚して子供作ってくれって」
『お、お前どう返事したんだ!?』
「好きな人いるからって断った。それに、相手の言う子どもづくりは、俺から学んだことと自分のコピーを融合することらしいから、たぶん実体ないよ」
『そ、それは……そうだな……』
千歳は微妙に飲み込めなさそうな顔をしたが、白米をほおばって飲み下すことで飲み込もうとしてるようだった。
俺はさらに話した。
「でね、断ったんだけど、相手が俺から色々学ぶ分にはいいよ、って返事したから、今後もちょくちょく接触あるかも」
『はえー……』
千歳は目をぱちくりした。
『お前、意外とモテるんだな』
「俺は、好きな人にだけモテたい……」
俺がモテたいのは、一人だけなんだけどなあ。
千歳は頷いた。
『うん……お前、その人にぞっこんなんだな』
俺は苦笑した。
「うん、そうだね」
千歳にぞっこんだよ。千歳は気づかないんだろうけどね。




