そして2人目確保したい
俺のファンは仕事が早かった。
公式アナウンスを乗っ取って、VR藁人形の仕様の危険性を周知。各ワールドのVR藁人形見つけ次第消去。あんまり行儀のいいやり方ではないが、VR藁人形はデータであり、コピーと拡散が容易だ。これくらいやらないと撃ち漏らすのは、わかる。
そして数日後。金谷あかりさんから俺たちに連絡が入った。
「先日のお話通り、和泉様のファンがオリジナルのデータにアクセスできるようにしてくれました」
「それに私たちがアクセスすればいいですか?」
「念の為に本白神社に人を集めます、その時にお願い致します」
そう言う訳で場が整えられ、俺と千歳は閻魔大王からの小箱を携えて本白神社に赴いた。
本殿の中に、金谷さん、緑さん、南さん、峰水香さんが輪になって座り、中央にノートパソコンが開かれている。
金谷さんが言った。
「画面のこのボタンをクリックでアクセスできます。和束ハルの、魂を引き出す術式を使ってみてください」
千歳が『うん』と術式を手に取り、眉根を寄せて力を込めるようにした。そして、守り刀を出して、ボタンをクリックする。
ノートパソコンの画面から、ボーリング球大の黒い玉が飛び出した。千歳はそれをがっしり受け止め、『怖くないからな、ちょっと痛いけど、ごめんな』と守り刀を玉に突き立てる。切り裂いた中から、細かく折りたたまれた紙、術式が書かれた紙を取り出した。
[ふぇ、ふぇーん……]
黒い玉は真っ赤な嬰児の姿に代わり、千歳はその子を優しく抱き、『よーしよしよし』とあやした。
『痛かったな、怖かったな、もうなんにも怖くないからな……』
赤ちゃんは白い玉に変わり、小箱の中に吸い込まれていった。千歳は小箱を抱えた。
『うまくいったな』
緑さんが言う。
「スムーズにいってよかったわ、魂引き出せない可能性もあると思ってたから」
『うん。和泉、お前のファン、仕事できるな!』
千歳が俺に笑いかけるので、俺は安堵のため息をついた。
「後で俺のファンにお礼伝えとくよ」
『そうしてくれ。この子にもミルクお供えしないとな』
南さんが言った。
「お二人がいなければ、ここまでうまくいかなかったと思います。これからも、ぜひお二人で仲良くいてください」
『仲良しだぞ? なっ、和泉!』
千歳が同意を促すので、俺は苦笑して頷いた。
「そうそう、仲良し」
千歳の思う仲良しと、俺の望む仲良しは違うんだけどね。まあ、千歳の思う仲良しであるだけいいとするか。