夢に思えど叶わない
Discord経由で、俺は俺のファンに説教を入れておいた。
恋愛関係でもなんでもない二人の子供と見紛う姿を作るのはグロテスクすぎるし、しかも片方は不妊で迫害された人なんだぞ、と。
「千歳がそういう方向に考えなかったから今回は許すけど、本当にこういうこと他の人にしたらダメだよ」
悪意がないのはわかるけど、なんかズレてるんだよな。俺のファン、見た目と同じく10歳くらいの精神年齢なんじゃないか?
すぐ返事が来た。
[本当にすまなかった、あなたは金谷千歳との子供を望んでいるのかと思ったんだ]
「無理なことを言わないでよ、いろんな意味で」
千歳と子供は望めないし、千歳がそばにいてくれれば俺はそれで満足、だいたい千歳が色恋わからないから俺は好きだって気持ちも伝えられないのに、千歳と子供とか子作りとかは本当に千歳の前で言及しないで欲しい。
そういう事を相手に伝えたら、また返事が来た。
[あなたは子供を持ちたいと思ったことはないのか?]
子供ねえ。いたら、かわいいだろうとは思うけど……。
俺は返事した。
「小さいころいろいろあって、自分は子供を作るべき人間じゃないと思ってたし、大人になってから少し考えは変えたけど、心底好きになってしまった人が子供を作れる人じゃないから、人生そういうこともあるよなって感じ」
まあ、もしも千歳との子供授かったらめちゃくちゃ喜ぶと思うけど、ありえないことだから。
[聞き方を変えよう。あなたは子どもを育てる気はないのか?]
「養子ってこと?」
[一言でいえば、そうだ]
「うーん、千歳がそれで許してくれるかによるかな。でも許してくれそうにないからね」
[金谷千歳はあなたの直接の子供、そして子孫を祟ることにこだわっていると]
「そういうこと。うまくいかない」
千歳と子育てか……暮らしが落ち着いたら、持ち家もあるんだし、ひとりくらい小さい子がいても……千歳はなんだかんだ言って小さい子の面倒見るの得意だし、俺だって子供は嫌いじゃないし……千歳と2人で小さい子と手を繋いで歩けたら……。
いや、でも、千歳が俺の直接の子孫にこだわる以上、夢物語だ。
[立ち入ったことを聞いて済まなかった]
「別にいいけど、何かするときはもうちょっと考えてからしなね」
[肝に銘じる。あと、あなただけが入れるプライベートワールドを作ったから、後でフレンドリクエストを承認してほしい]
「わかった」
とりあえず、こんなもんかな。
しかし、俺と千歳の容姿、声は俺の小さな時の人か……俺と千歳が子供作れたらあり得たかもしれない姿、ねえ。
あんまり作って欲しくないけど、かと言って消すのも惜しい気持ちがあるのだった。




