本当は早く助けたい
金谷あかりさんや緑さんによると、俺のファンがくれる情報は間違いないそうだ。俺のファンが調べたローズ系アカウントからの購入者リストは全部当たりらしい。心霊業界は購入者リストをさらって藁人形回収・呪いの札回収・呪力の解呪を進めているとのことだ。
ただ、和束母娘の居所は一向に掴めない。和束美枝のマイカアカウントを見ても、「食事作るのめんどくさい」とかばっかで、はかばかしい情報なし。
ただ、「ごはん4人分作るの大変」みたいなポストがあって、俺は驚いた。
いや、4人で合ってるのか。和束母娘、3人目の協力者、そして1人だけ生かされてる【アタリ】の子。
その事を千歳に話すと、千歳は首をひねった。
『じゃあおっぱいは卒業してるのか、それとも離乳食かな?』
「うーん、やっぱり、おむつがいる歳ということしか分かんないねえ」
『それもそうか』
千歳は少し考え、それから言った。
『生きてる子さ、どんなふうに暮らしてるのかな?』
「どんなだろうね……目的からすると、ある程度大きくなるまでは育てるだろうけど、どういう境遇かは……」
『多分、幼稚園とか保育園とか行けてないよな?』
「そう言うのに通うための戸籍があるかどうか……いや、多分ないな」
出生届出して戸籍作ってたら、行政の介入があるだろうからな。
『やっぱ手元に置いてるのかな』
「だろうとは思う、でも和束美枝さんとは離してありそう」
『じゃあ、ワシみたいに育てられてるのかなあ?』
「千歳みたいに……? あっ」
俺は思わず口ごもった。そう、千歳の核の人は、地下室の座敷牢に閉じ込められて育ったのである。ひとりぼっち、たったひとり世話してくれた人には嫌われて。
俺は改めて千歳に聞いた。
「その、座敷牢とか……そう言うこと?」
『何ていうか、それが一番手っ取り早いと思う、世話とか、懐かせて言うこと聞かせるとか、閉じ込めておけばやりやすいし』
千歳は何でもないように言った。多分、千歳にとっては大したことじゃないんだ、だってそうやって育ったんだから。
「そうか……千歳みたいに、か……」
俺は暗い気持ちになった。千歳みたいにだったら、あんな地下の暗がりに閉じ込められて、ひとりぼっちでさみしい思いをして……。
……なんとか、助けてあげたい。でも、居場所の手がかりは何もない。