表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

810/848

天秤にかけて選びたい

 警察が来る前の時間に、金谷さんには連絡を入れた。来る警察には「篩建築事務所分所の事案です」と言っておけばある程度何とかなるのこと。

 警察署が近いせいか、すぐパトカーが来た。俺と千歳で「篩建築事務所分所の事案で、人骨が入ってるかもしれない藁人形です」と伝えると、とりあえず藁人形は回収され、若い男は公共の場で藁人形に女性の写真をつけて釘を打っていたかどで引っ張っていかれた。俺たちも、事情を聞かせてくれということで、またパトカーに乗った。

 警察署で分かる限りの事情を話したが、その間、俺は他のサイトで藁人形が売られているのを危惧していた。警察にも伝えたが、自分で探した方が早いかもしれない。いや、俺のファンならもっと……。

 千歳も事情を聞かれていたが、呪力を切って疲れていたのだろう、半分船を漕いでいた。事情聴取が終わり、俺はねむねむ千歳に肩を貸してタクシーに乗せ、なんとか家に帰った。

 千歳を布団に入れて、起きた千歳が食べるかもとお米を炊いておいて、やっと俺は一息ついた。

 それから、藁人形が売られていそうなサイトを調べた。とりあえずマイカイカというアカウントがないか調べると、BOOTH、BASE、ココナラ、minneに発見した。売っているのは人形作成キット(画像のみ藁人形)、お札(説明は「相手に縁のあるものに付けると効く」のみ)。無害さを装っている!

 個人で物を売れるところなら、藁人形も藁人形作成キットも呪いの御札も売れる。複数サイトで複数アカウントで売られてたら、しらみつぶしにもほどがある……。

 金谷さんには、藁人形を見つけたサイトとマイカイカアカウントの存在を連絡しておいた。それから、俺のファンに協力を要請しようとしたら、すでに連絡があった。


[何かあっただろうか?]


 連絡が来た時刻は、俺と千歳が藁人形を抑えた頃。え? タイミング良すぎない?

 なぜかと不審に思ったが、とりあえず俺は相手に事情を話して、藁人形その他を売ってるサイトの捜索と売ってるアカウントの通報を頼んだ。


[了解だ。いきなりあなたの心拍が上がっていたから、心配していたんだ]


 心拍数!?

 俺は、左手首にはめたスマートウォッチを見た。これか!?


「俺のスマートウォッチ見てんの!?」

[可能な範囲でモニタリングしている。販売状況についてはもちろん調べるが、複数サイトかつ複数アカウントとなると調べるだけでかなり時間がかかる]


 た、頼りにはなるんだよな……。

 俺は、生体情報を握られている事実と、相手に協力してもらうことで助かる人を天秤にかけて煩悶した。うーん、俺個人の生体情報と不特定多数の人が死ぬかもを天秤にかけたら、絶対俺の生体情報のほうが軽い……。

 相手の協力を仰がないとどうにもならないし、相手に飴をあげるという意味でも、ひとまず受け入れておこうか……気にしなければいいだけの話だし……。

 俺は、俺のファンを名乗る不審人物に返事した。


「販売網押さえるの全部お願い、今忙しいんだ、もうこの際、俺の心拍数も歩数も見ていいから」

[了解だ]

「でも千歳のそういうのは見ないで、個人情報見ないで」

[承知した]


 良かった、千歳はターゲットじゃない。俺だけがターゲットなら、まだなんとかなるし、程度にもよるが許せなくはないからな……。

 千歳に変なことされたら、おそらく俺は許せないからな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ