表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

81/866

番外編 金谷あかりの独白

罪悪感を拭いきれない。さっき和泉さんに連絡しても、相手は今後も私達を頼れる相手とみなしているようだったし。半分尾行しながらずっと聞いていた音声も、ただののんびりした温泉旅行以上のものを出なかったし。

「盗聴器なんて、仕掛けたくなかったなあ……」

私は、それっぽい布に包んで首から下げられるようにした盗聴器を眺めた。ご丁寧に防水である。

千歳さんが藤さんを一時的ながら取り込んで活動する、ということを私が皆に伝えたら、静観派の中でも、やはり融合しての変化を危険視する人が出てきた。怨霊の希望をできるだけ叶えて大人しくさせるべき派と対立しかけて、妥協案として、藤さんを取り込んだ千歳さんを、藤さんが出ていくまでずっと監視することになった。盗聴器、私、狭山さん。私達から少し離れたところで、南さんも盗聴器の音声を聞きながらずっとついていた。離れていたのは、私や狭山さんに怨霊関係で何かあったとき、巻き込まれないためだ。

私個人としては、千歳さんはもう全然危険に思えない。事前に、藤さんに頼み込んで千歳さんの中を見てほしいと伝えたが、それに応えて藤さんが私達の所にきて話してくれた内容も、それを補強している。

気をつけるべきことがあるとしたら、藤さんが言っていた「あの怨霊くんは今、和泉さんのおかげで今までになく幸せだけど、そのことをあんまり自覚できてない。自分の核になってる霊の生前のこともあんまり思い出せてない」ということかもしれない。

幸せだという自覚がないなら、無自覚にその幸せを壊してしまうことがあるかもしれない。壊してしまって、初めて後悔するかもしれない。

千歳さんが幸せなのは、核である朝霧の忌み子は生前ずっと孤独で、親しく話してくれる相手が欲しくて、でもそれが今当たり前に手に入っているからだろう、と藤さんは言っていた。

私達が平和に生きていくためには、千歳さんに今が幸せであることを自覚してもらって、周りを大切にするべきだと気づいてもらうといいと思う、ということを上司に言ったら、「理屈はわかるけど、実行が難しいでしょう」と言われた。その通りだなと思った。

和泉さんは、千歳さんに、「俺を祟り続けたいなら他の人を傷つけたり祟ったりしないで」と言い聞かせて、千歳さんも暴れる気は全然ないし、仮に力を振るわざるを得なくても穏当な手段を選ぶ余地がある、とは伝えてきてくれているけど。

やっぱり、和泉さんと千歳さんが暮らしやすいよう、私達はそれとなくサポートしていくしかできないのかな?

あの二人がもっと暮らしやすくなる……金銭的サポートはしているけど、和泉さん、あまり大金になると受け取るの嫌がるし、もっと別のサポートがいいのかな……金銭面以外でできるサポート……。

……ひとつ、いいことを思いついた。千歳さんは和泉さんの同居人として活動しやすくなると思うし、和泉さんも多分喜ぶと思う。とりあえず、上司に相談してみよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ