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よそでも売れるとは知らない

 仮免の技能講習は1日二時限まで、学科はオンラインも可能。なので、土曜の午前に技能講習を済ませれば、近くのおいしいパン屋で買い物して、帰ってそのパンをお昼にすることが可能。

 というわけで、教習所帰りに千歳とパン屋に寄った。千歳はトングとトレーを手に、嬉しそうにパンを取っていく。


『くるみあんパンと、パンオショコラと、クロックムッシュとー、チーズブール……あっ、カレーパンも!』

「俺サンドイッチ一箱でいいや」

『お前本当少食だなあ』


 そんなこんなでパンを買い、帰ろうとすると、千歳がハッとなって空を見上げた。


『……呪力だ! あっち飛んでってる!』

「え!?」


 あの藁人形関係!?

 千歳がすごい速さで大通りの向こうの住宅街へ駆け出して行ったので、俺は慌てて追いかけた。千歳はアパートの裏に回り込み、『こいつめ!』と声がした。

 必死で追いつくと、千歳は鞘を払った守り刀を手に、肩で息をしていた。


「呪力切った!?」

『切った……とりあえず大丈夫だ』


 千歳は刀を納めてお腹にしまい、また上を見上げ、大通りの向こうを指さした。


『呪力が来たの、あっち方向だから行ってみたい』

「藁人形あるかもだね」


 大きい遺骨が仕込んであれば、また魂を引き出せるかもしれない。そうでなくても、人骨入ってれば警察案件だし。

 そういう訳で千歳についていくと、小さい神社に着いた。そして、近くの木に金槌を振り上げている若い男がいた。藁人形に執拗に釘を打ち付けている。

 千歳が怒鳴った。


『お前! それガチの呪いのやつだぞ! 本当に人が死ぬぞ!!』


 男は振り返り、俺たちを見て目を見開いた。


「だ、誰!?」


 まあ、そうなるよな。しかし、見過ごすわけには行かない。

 俺は男に言った。


「とりあえず通報しますよ。その藁人形、中に人骨入ってるかもしれないんで」

「人骨!?」


 スマホを取り出して、110番。場所を教え、「人骨入り藁人形の可能性が高いです。川崎市の篩建築事務所関連とお伝え下さい」と告げた。こう言えば警察にもある程度のことが伝わる、と金谷さんから伝えられてたので。

 千歳は逃げようとする男の手首をひねり上げていた。電話を切り、俺は改めて藁人形を見た。……なんか、出来が悪いな? 藁の先端が揃ってないし、手足の縛り方も甘いし……。

 俺は男に聞いた。


「これ、どこで買ったんです?」

「ぶ、BOOTHで……」

「BOOTH!?」


 メルカリでもヤフオクでもなくて!?

 俺は焦った。


「ちょっ、ちょっと詳しく聞かせてください、BOOTHで!?」


 俺のバカ、なんで気づかなかったんだ! 物を売れるサイトはヤフオクとメルカリ以外にもたくさんある! BOOTHは同人を売るサイトして認知されてるが、普通に自家通販でいろんなものが売れる!

 男は、震えながら言った。


「て、手作りキットって、藁人形の、メルカリとヤフオクで評価高かった人の……」


 余所で売ってるのか、メルカリとヤフオクの評判使って!

 俺は男に言った。


「警察でも聞かれると思いますが、そのアカウントについて詳しく聞かせてください」

「マ、マイカイカって垢で……色々売ってて……」


 千歳は、何がなんだかよくわかってないようだった。


『ブースってなんだ?』

「ネットで物を売れるサイト。和束みやび、他のサイトで藁人形とか呪いとか売り続けてるかも」

『まだ売ってんのか!?』

「物売れるサイトってたくさんあるし、それ全部調べなきゃいけないかも……」


 俺は天を仰いだ。自分でも調べるつもりだが、また俺のファンを名乗る不審人物の手を借りなきゃいけないかもしれない……。

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