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引っ越し計画固めたい

「ひゃ、百万円!?」

俺は腰が抜けるほど驚いた。旅行で足が出た分のことを金谷さんにLINEで相談したら、

「藤さんに、「全部済んだら、自分が金谷神社に渡したお金から二人に百万円渡してほしい」と言われているので、それで相殺できませんか?」

と返事が来たからだ。

「そんなにもらえませんよ」

「でも、藤さん、受け取ってもらえなければ和泉さんの夢枕にコツコツ立つかもしれないと言っていたので」

それは嫌だ。

追加で返事が来た。

「藤さんが和泉さまたちと離れたあと、私どもとも話したのですが、藤さんはお二人に非常に感謝していました。心残りが満たせたのもそうですが、千歳さんの中は幸せでゆったりしていて、それは和泉さんによるものが大きいと言っていて。なので、受け取っていただけないでしょうか」

藤さんは、千歳は現在、今までで一番幸せだと言っていた。何が良くてそんなことになっているのかよくわからないが、千歳の精神状態がいいと、中にいて居心地がいいんだろうか。

千歳が幸せなのは嬉しいけど、俺によるものと言われてもよくわからない。千歳に世話になってばかりなのは俺だし。そりゃ基本の食費は俺が出してるけども……。あ、家賃も俺が出してるから、それなのかな? 千歳、俺のところにいなきゃ宿無しだろうし。

……いい物件が見つかってよかったな。ちゃんと住心地の良いところにしよう。

俺は金谷さんに返事した。

「じゃあ、受け取らせていただきますが、引っ越しの費用とかはそこから出すので、今回の引っ越しで金谷さんたちからの援助はいいです。家賃もむしろ下がりますし」

「よろしいんですか?」

「大丈夫です」

「では、そのようにさせていただきます。でも、私どもがご協力できることはいろいろあるので、何かあったらすぐご相談ください」

「ありがとうございます、何かあったらよろしくお願いいたします」

スマホを置いて仕事に戻り、しばらく集中していると、怨霊(女子中学生のすがた)(命名:千歳)が買い物から帰ってきた。

『ただいま! 星野さんお土産気に入ってくれた!』

「おかえり、俺からも、いつもありがとうございますって言ったの伝えてくれた?」

『うん!』

千歳は台所に荷物を置き、エコバッグから野菜や肉を出して冷蔵庫に詰め始めた。

「あ、千歳、買い物整理しながらでいいんだけど、聞いて」

『どうした?』

「あのさ、藤さんのお金から、今回のお礼ってことで百万円振り込まれるって」

『そんなに!?』

千歳は、鶏肉のパックを片手に目を丸くした。

「でさ、千歳頑張ったわけだから、千歳に半分渡すけど、引越し費用と旅行で足が出た分をその百万円から出したいから、引越し費用その他抜いてから、半分渡すってことでいいかな?」

『え、いいけど、そんなにもらっていいのか……ていうか、引越し費用ってどれくらいなんだ?』

「んーと、コースによるんだよね。お金に余裕あるし、俺がいろんな手続きで疲れちゃうから、もう引越し業者に荷造り任せるコースにしたいんだけど、そうすると十万円超すかなって所」

『荷造り任せられるとかあるのか!? ていうか、それで十万で済むのか!?』

「うん、まあ、見積もりによっても費用に変動はあると思うけど。で、引っ越す時期なんだけど、八月の暑いさなかにやるのも大変だから、秋に入ってからにしたいなって」

千歳は品物を冷蔵庫に全部納め、エコバッグを畳みながら言った。

『早く出てけって言われてるんじゃなかったか?』

「でも、一応年内ってことになってるし、スケジュールキツキツにして俺が疲れて動けなくなったらどうしようもなくなるし、まあ、これくらい許してもらいたいなって」

『そっか、お前何かあるとすぐ寝込むもんな。でも、荷造り任せるなら、引っ越しの準備とか何もしなくていいのか?』

「うーん、荷物が少ない方が見積もり安くなるだろうから、家のもの整理して、いらないものは捨てたいんだ。だから、捨てるものたくさん出たり大きいもの出たりした時、捨てに行くの手伝ってほしい」

『わかった』

千歳が自分の収納ボックスにエコバッグを入れた。それを見て、俺は思いついた。

「あ、あと、荷造りおまかせコースでも、貴重品は自分管理なんだ。だから、千歳、なくしたら困るものは、引っ越しの時自分でちゃんと持ってて」

俺は、財布と通帳とノートパソコンは引っ越しの時自分で持っておこうと思うが、千歳の貴重品は千歳が管理したほうがいいだろう。

千歳は首を傾げた。

『なくしたら困るもの? うーん、財布と、貯金と、タブレットと、あと狭山先生の小説と漫画だなあ』

「本は引越し業者に任せていいと思うけど、お金とタブレットは持ってて」

『貯金、けっこう大金なんだよなあ。ここにまた、引っ越しした後四十万近く入るしなあ』

「まあ、そうだよね……口座作れればいいんだけどな」

俺の名義で口座作って、それを千歳に使ってもらってもいいかもしれない。けど、これから引っ越しのために荷物整理したり、不動産屋と打ち合わせたり、電気水道ガスの切り替えをしたり、引越し業者の選定をしたりに忙しいし、口座作るのはできれば引っ越し後にしたい。

「千歳が使える口座、今後考えるけど、引っ越し後のほうが手が空くから、とりあえず引っ越しの時は千歳のお金全部持っててくれないかな?」

『わかった、体の中の方にしまい込んで大事にしておく』

……千歳、実は全裸だと温泉のときに判明したが、普段持ってるお菓子とか、体にポケット作ってしまい込んでるのか?

「悪いけどよろしくね」

『おまかせコースって、荷ほどきもしてくれるのか?』

「うん、どこに何を置くかは指示しなきゃいけないみたいだけど、どこに何を置くか決まってれば、後は全部任せていい」

『じゃあ、それも考えとかなきゃいけないんだな』

……千歳が、宿があって幸せだと思ってるなら、なるべく千歳の住みよいようにしたいな。

「千歳、好きに希望出してよ。俺も考えとくけど」

千歳は不思議そうな顔になった。

『えーと、じゃあ、部屋の見取り図とかあるか?』

「不動産屋のサイトにある画像、タブレットに送っとくね」

『台所まわり、好きに決めていいか?』

「うん、他の部屋もなるべく千歳の希望通りにするから」

『じゃあ和室はゴロ寝スペースな!』

内見の時も似たようなこと言ってたけど、千歳は畳でくつろぎたいらしい。日本人だなあ。

「近々、不動産屋の人と打ち合わせるけど、その時もう一度部屋入らせてもらおうか? 見てイメージ膨らませたほうが決めやすいだろ?」

『それがいい!』

今、千歳が幸せなら、なるべく幸せなままでいてほしい。

俺にできることはたいしてないけど、でもできることはするから、楽しく過ごしてほしい。

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