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ミルク供えて祈りたい

 千歳は、探してる魂にいつ行き合ってもいいように、外出時は小箱を持ち歩くことにするそうだ。で、家にいる時は千歳の物入れ棚の上に小箱を置いておくとのこと。

 千歳は、棚の上に布を敷いて、小箱を置き、『うーん』と首をひねった。


『かわいそうな子だから、なんか供えといてやりたいんだよな』

「花とか?」

『いや、粉ミルクとか。あ、でも、溶かしてやらないと飲めないな』

「最近は液体ミルクがあるって聞いたけど」


 東日本大震災のときに話題になってたので、覚えてる。災害時に役立つし、普段からも溶かす手間がなくて便利だとか。

 千歳は不思議そうだ。


『液体ミルク?』

「缶に溶かした粉ミルク入ってて、開けて哺乳瓶の乳首はめるだけで飲ませてあげられるようなやつ」

『おっ、いいな。じゃあそれ供えてやろう。ドラッグストアにあるかな?』

「探せばあるんじゃない?」


 その日、千歳は暑い中ドラッグストアに行き『あった! 液体ミルク!』と帰ってきた。そして、いそいそと小箱の前に液体ミルクの缶を置いた。


『ほーら、いいだろ』


 俺は、ふと気づいた。この小箱に入ってる子は、母乳も粉ミルクも、一度も飲まず殺された可能性がある、と。

 なんとも言えない気持ちになり、俺は立ち上がって棚の前まで行って、小箱に手を合わせた。すると、千歳も隣で手を合わせたようだ。


『お前のきょうだいも、ちゃんと見つけるからな』

「待たせるかもしれないけど、俺たち頑張るからね」


 遺骨がまた見つかるかもしれないし、他の手がかりがまた出てくるかもしれないし。生きてる子は生きたまま助けたいし。

 まだまだ、これからだ。

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