まずは一人目確保したい
ことを受けて、人を集めて遺骨から魂を引き出そうとなった。本白神社の本殿に、藤さん、緑さん、金谷あかりさん、狭山さんが戦闘要員として集められる。それと、和束ハルの術式を検めるために峰紅さんと上島家の人が来た。
藤さんが千歳に聞いた。
「前渡した小箱持ってきてくれた?」
『うん、魂引き出したらすぐ小箱に入れられる』
峰紅さんが和束ハルによる魂を引き出す術式に目を通し、上島家の人にも読ませて、それから言った。
「問題はない。使っていい」
和束ハルは不満げだ。
「妙なもんはなんも仕込んどらんって」
まあ仕込んでないだろうけど、無確認で使うにはデカすぎる前科があるだろ、あなたは。
千歳が術式に手を伸ばした。
『じゃあ、ワシ使っていいか?』
緑さんが言った。
「荒事になるかもしれないから、外に出てやったほうがいいと思うのよ」
『わかった』
みんなで境内に出る。
千歳は、守り刀の鞘をはらった。そして、見つかった遺骨を術式が書かれた和紙の上に置き、それから和紙に手を触れる。和紙に書かれた文章が光、そして遺骨からボウリングの玉くらいの黒い玉が飛び出てきた。
狭山さんが叫んだ。
「強いですよ! 中に術があります!」
黒い玉は、明確に千歳を目指してぶつかってくるも、千歳は黒い玉をがっしり受け止めた。
『ごめんな、ちょっと外科手術だ』
千歳は黒い玉に守り刀を突き立てた。切り口を広げ、手を突っ込み、そこから畳まれた和紙を取り出す。
すると、黒い玉は、真っ赤でちっちゃな新生児の姿になった。そして、ふにゃふにゃ泣き始めた。
千歳は、その子を『よしよし』と抱っこした。
『ごめんな、痛かったな、もう大丈夫だからな』
まるで我が子をあやすように、千歳は赤ちゃんを抱っこしてゆらした。そして、傍らに置いた小箱に体を向ける。
赤ちゃんは、白く光る小さな球になって、小箱に吸い込まれていった。
藤さんが大きく息をついた。
「よかった、とりあえず一人目確保できた……」
藤さんによると、小箱は魂たちを一時的に中で眠らせているとのこと。
藤さんは、小箱を拾い上げた千歳に言った。
「他の八体もこんなだったら、魂をこの小箱に入れて眠らせてあげて」
『うん』
「一人はまだ確実に生きてるから、その子は生きてるうちに見つけたいよね」
俺は頷いた。
「本当にそうですね」
藤さんは、千歳が持つ小箱を指さした。
「まあ、賽の河原行きにするのもあまりにもかわいそうな子だから、しばらく小箱の中で寝かせといてあげてよ。閻魔大王様もその子たちの対処は考えてるみたいだからさ、悪いようにはしない」
『うん、じゃあこの小箱、大事にする』
千歳は、ぎゅっと小箱を抱きしめた。




