番外編 金谷千歳と発見
草木も眠る真夜中。けたたましくスマホが鳴って、見ると和束ハルからの電話だった。
「悪い、夜中に!」
『なんだよお、寝てたんだぞ』
「すまん、うちの近くで丑の刻参りしたバカがおる! 例の藁人形かもしれん!」
ワシは仰天して、一気に目が覚めた。
『あの藁人形!?』
「呪力は今なんとか捕まえとるけど、うちじゃ長く持たん! 助けて!」
『わっ、わかった!』
電話切って、ワシは、一緒に起きちゃって寝ぼけ眼の和泉に頼んだ。
『本白神社ついてきてくれ!』
「な、何事?」
『あの藁人形で本白神社に丑の刻参りした奴がいるって!』
和束ハルんちは本白神社の空いた土地、確かに近くで丑の刻参りできる!
和泉は驚いて目が覚めたみたいだ。
「の、呪い飛び出てる!?」
『呪力今捕まえてるけど長く持たないから来てくれって!』
「わ、わかった、行こう」
2人とも寝間着のTシャツ短パンのまま、スマホだけ持って神社に走った。境内に入ると、和束ハルの声がする。
「こっち! こっちや!」
本殿の裏、和束ハルんちに回ると、和束ハルが下半身のヘビ伸ばして、お札持って、黒い靄を捕まえてた。高千穂先生が下半身のヘビに両手で触れて、なけなしの霊力を注いでる。
『今やる!』
ワシは腹から守り刀を取り出して、袋を開けて鞘を払った。そして、黒い靄を思い切り切り裂いた。
靄は、空気に溶けて消えた。
和束ハルは、その場にへにょへにょとへたり込んでぐったりした。ワシは刀を鞘に納めて、袋に入れてまた腹に押し込んだ。
「あー、どうなるか思たわ……」
『捕まえといてくれて助かった』
「えらい呪力やったで、霊力がすごーて……うわっ!? 和泉豊!?」
和束ハルは、今更ワシの後ろの和泉に気づいて飛び跳ねた。和泉は微妙な顔をした。
「別にとって食いやしませんよ。……ん?」
和泉は首を傾げた。
「藁人形どこです?」
高千穂先生が「あれです」と境内を囲む木を指さした。指さす方の松の木には、五寸釘に刺されたハンカチと藁人形。
和泉はそっちに行きながら言った。
「これ、もしかしたら遺骨大きいんじゃないかな……」
『え、なんで?』
「すごい霊力だったんだろ、なら遺骨の体積もあるかなって」
和泉は藁人形をつかみ、「抜かなくていいな、中身だけ取れれば」と揺さぶった。
白い塊が落ちる。少しカーブを描いた、白い骨。前見たのより大きい。
和泉はそれを拾い上げて、言った。
「和束さん。どうです?」
和束ハルはつばを飲み込み、言った。
「……いけるわ。呼び出せるで、魂」




