買ってみちゃえば話早い
梅干しが出来すぎて、星野さんにあげても、うちで毎日食べても、割と余りそうだったから、和束ハルにLINEした。
『梅干し一瓶いらないか? うまいやつだぞ』
「欲しい! 高千穂さんが和食派なんよ」
そういう訳で、ワシは瓶に梅干しを詰めて、和束ハルんちに分けに行った。
『おら、南高梅の梅干しだぞ、ありがたく受け取れ』
「南高梅!? 高級品やん! え、あんたの手作り?」
『うん、友達からもらった梅で作ったんだけど、ものすごくできちゃってさ、おすそ分け』
「はー、ありがたくもらうわ。茶でも飲んでく?」
『飲んでく!』
で、ダイニングに通されて麦茶と水ようかん出してもらったんだけど、喜んで食べてたら和束ハルはとんでもないこと言った。
「メルカリのローズアカウントから、御札と藁人形買ってみたんやけど」
『ええ!?』
水ようかんが鼻から出るかと思った。
和束ハルは、なんでもない顔で言葉を続けた。
「藁人形はハズレやったわ、遺骨やのうて術式に霊力込めてあった」
『え、じゃあ当たりが出るまで買うか?』
「そこまで母親に金流したないわ。で、御札やけど、呪いの御札はマジのや。で、呪い返しの御札はただの紙やったで」
『うわ、性格悪……』
呪う手段は流すのに、呪いから守る手段は流さないのか……。
和束ハルはワシの言葉に頷いて、また言った。
「評判はほしいけど、コストかけたくないんやろな、呪い返しの方が作るの大変やし」
『なんか他に分かることないか?』
「梱包は普通やったで、でも警察に見せたら指紋くらいとれるかもしれんな」
『このこと、緑さんに伝えたか?』
「まだや、さっきメルカリ届いたからな」
『緑さんに言ってくれ、ワシも日報に書く』
「やっとくわ」
帰って和泉にあったことを言ったら、和泉は「そうか、買えばよかったのか!」と頭を抱えて叫んだ。
「そうすれば手がかりだってたくさん手に入る……なんで思いつかなかったんだ!」
『でも、当たり引くまでやるのは、金がその分和束みやびに入るからアレだろ』
「まあ、和束さんの買った分だけで手がかりとしては十分か……指紋は取って欲しいけど」
金谷あかりさんに『日報にも書くけど』とあったことを報告したら「すぐ和束ハルの買ったものを詳しく調べます」と返事が来た。でも、和束ハルでもわかんないこと、指紋くらいしかないんじゃないかなあ。




