番外編 金谷千歳と参院選挙
土曜日の朝ごはんの時。休みだから、和泉に「早いうちは空いてそうだから、期日前投票行かない?」って誘われた。
『でもワシ、まだ入れるところ決めてない』
「そっか」
『なんかさ、金くれて消費税なくしてくれて、あと固定資産税も下げてくれるところないかな?』
ワシ家買うし、毎年固定資産税取られるのヤなんだよな。それに、最近何もかも高いし。
そんなストレートな欲望を言うと、和泉は苦笑した。
「なかなかそう都合よくは行かない。当選させたくないところを落とすための選挙と思わなきゃダメだな」
『当選させたくないところかあ』
ワシは、昨日のことを思い出した。
『あのさ、近所のコンビニあるだろ』
「うん」
『あそこで外人の店員さん割と見るんだけどさ』
「そういやそうだね」
『昨日コンビニ行った時、その近くで選挙カーが「外国人より日本人に仕事を! 外国人は帰らせるべき!」って騒いでてさあ』
「うわ……」
和泉は引いた顔をした。
『あそこのコンビニの店員さん、ちゃんと仕事してるのに、目の前でそんな事言うのかって……』
悲しい気持ちになったんだよな、昨日そんな事があって。
「そっか……」
『だから、あそこは当選してほしくないかも……』
そう言うと、和泉は少し考えてから言った。
「なんていうかさ。日本のコンビニで働いてるような人、その時点で日本語と故郷の言葉2か国語できるってことだから、エリートだよね」
『そっか、そうだな』
「俺、英語で同じことやれって言われたら無理だし。そういうエリートが将来、故郷の国と日本の関係を繋ぐだろうし、日本語できる外国のエリートに日本を憎まれたら外交関係終わりだよね」
『そうだな』
「働いてる人じゃなくても、外国の人に日本に悪感情抱かれたら、ゆくゆくは外交問題の種になるかもしれないし、だから、千歳の選び方でいいんじゃない?」
『そっか!』
ワシは嬉しくなった。
『ワシ、やだなあって思ったの間違ってなかったんだ』
「別に間違いとかそういう問題じゃないけど、相手を尊重するのは自分の利益にもなるよね」
『うん、じゃあその線で調べて、良さそうなところに入れる』
「調べるのにも時間かかるだろ? 明日にしようか、行くの」
『うん』
頑張って調べて、ちゃんとやろうっと。




