番外編 金谷千歳と術式
藁人形対策で、御札や術式に霊力を込める仕事をまた頼まれた。御札と術式を持ってきてくれたあかりさんによると、藁人形の件で、緑さんはまた大変らしい。最近会えてないし、一緒にお茶したかったんだけどなあ。
がっかりしながらも、家事したり仕事したりして、やっと夜ソファーでのんびりした時。スマホが鳴って、見ると和束ハルからのLINEだった。
難しい術式のことがたくさん書いてあってよくわからなかったんだけど、要するに、「ある程度以上の大きさの嬰児の遺骨があれば、その遺骨を通して魂を引っ張ってくる術式を作れる」だって。
『そんなん作れるのか!?』
「いるか?」
『欲しい、あっ、でも、一応緑さんにも話通して欲しい』
「連絡はしといたで、そのうち返事くる思うけど」
『そっか』
「よっぽどの霊力を術式に流さんと引っ張ってこれんから、使えるのあんたくらいやけどな」
なるほど、と思ってたら緑さんからも連絡があった。
「和束ハルから連絡あった?」
『あった、でかい遺骨があれば探してる魂呼び出せるかもって』
「術式ができて、峰家と上島家のチェックが通ったら千歳ちゃんに試してほしいんだけど、いい?」
『うん』
「でもある程度以上の大きさの遺骨じゃないとダメ、っていうのがねえ」
ワシは、軽井沢で藁人形からこぼれた白い骨を思い出した。
『こないだ見つかった骨じゃ小さいか?』
「小さいみたい」
『そっかあ』
そんなにうまく行かないか。
「こっちも、呪いを見つける度に例の藁人形じゃないか確認しててね。2つ3つ見つけたんだけど、軽井沢で見つかったのより遺骨が小さいから」
『細かく砕いて使ってるんだなあ』
「霊力を遺骨に頼ってない藁人形もあるから、気長に探すしか無さそう」
『そっかあ』
やりとりが終わって、隣で一緒にソファー座ってた和泉に今のことを話すと、和泉は首をひねった。
「和束みやびはさ、ある程度の大きさの遺骨から魂を引っ張り出せるって知ってるのかな」
『あー、知ってて、引っ張ってこれないくらい細かくしたかもしれないのか』
和束ハルにLINEでその辺を聞いてみると、天才っぽい返事が来た。
「まー知っとるやろけど、うちは母親よりもよっぽど腕ええで。あの母親が必要だって思う大きさの遺骨より小さくても、魂引っ張ってきてやるわ」
『そっかあ』
和束ハルの腕前に期待するしかないのか。あとは気長に藁人形を探すしかない。
藁人形を探すには呪われた人探さないといけないし、呪われた人の呪い祓うにはワシの御札が役に立つし。まあ、今は目の前のことを頑張らなきゃいけないのか。




