友の幸せ祈りたい
いろいろ一息ついたので、夜、おっくんとリモート飲みをしている。最近のことを話したら、おっくんは仰天したみたいだ。
「えーマジ!? 藁人形ってそんなに売られてるの!?」
「しかもその中にさ、ガチに効くやつが売られてて大変だったんだよ……」
あまりに重すぎるので、閻魔大王様からの頼み事はぼかしたが、俺はおっくんに軽井沢での一件は話した。
「こっわ!」
「逆恨みでなんかやってくる人も普通にいるから、おっくんも気をつけてね、めちゃくちゃ痛くてでも病院で何も異常がない、とかだったら俺に言って」
「そんなに売れてんの、そのガチ藁人形」
「売れてるし軒並み高評価」
「怖ー……えっ、ゆっちゃん、会社の仕事と唐和開港奇譚の仕事に加えてそんなんやってんの? 大変じゃない?」
「まあ今のところ何とかなってるし、何とかするつもり。会社も事情言えば理解してくれるところだし」
怨霊に子々孫々まで祟られてるとか、怨霊を狙う悪者に子供にされてしまった、とかまで理解してくれる会社である。かなり当たりを引いている。
おっくんが言った。
「あ、そうだ。俺、今度、咲さんと入籍する」
「あっそうなの!? おめでとう!」
おっくんが咲さんと同棲した話は聞いてたが、そうか、順調に行ったのか。よかった。
俺はおっくんに聞いた。
「式いつ?」
「いや、お互いめんどいってことでしない。ウェディングフォトだけ撮る」
「そっかあ」
まあ、式あげるとなると費用も手間もかさむしな。
「あと、俺の方が苗字変わるから。狭山武蔵になる」
「えっそうなの!?」
「仕事では普通に奥武蔵でいくけど。まあね、俺ね、父親の跡継ぎたくないからね」
おっくんの父親は政治家である。おっくんのお姉さんが後を継いでいるが、おっくんにも後を継いでほしいと圧があったとのことだが、それから逃げるためだろう。
「そっかあ、とにかくよかったよ、おめでとう」
友達の慶事は素直に嬉しい。友達には何事もなく幸せに暮らして欲しい。
……だから、誰彼なく害する呪いの藁人形を撒き散らされたくないし、撒き散らされたものは無害化していきたい。




