表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

788/849

出回ることはやめさせたい

 千歳にも、金谷さんから同様の報告が行ったらしい。俺に聞いてきた


『とりあえず、和束美枝に、メルカリとヤフーオークションってとこで藁人形売らせないようにするんだよな?』

「うん、自主的にアカウント削除をさせたい、できれば」

『でも、どうやるんだ?』

「まあ、和束美枝さんは良心あるみたいだから、そこに訴えるしかないよね」


 俺はスマホでヤフオクを開いた。ローズアカウントに接触しようとすると「出品者のブラックリストに登録されているため、入札できません」と出た。ブロックで逃げようとしたのか? 甘いな。

 メルカリの方で行こう。俺は適当な名前でメルカリにアカウントを作り、ローズアカウントにメッセージを送った。


「和束美枝さんですね? ヤフオクも見ています。あなたの売っているものは実害が出るものなので、売るのはやめてください」


 しばらく待つかと思ったが、すぐメッセージが返ってきた。


「誰ですか」

「名乗るほどのものではありません。けれどあなたのお母さんは悪いことをしています」


 和束美枝さんと、接触できた。

 俺は迷った。ここですべてぶちまけてしまうこともできる。あなたが産んだ10人の子供は、ほとんど殺されて、骨にされて呪いに使われている、と。

 でも、おそらく和束美枝さんは、子供に関してのことを何も知らない。

 俺は、言えなかった。何も知らない一人の母親に、あなたの子供は殺されている、あなたの母親に殺されている、とはとても言えなかった。

 迷った末、俺はこう送った。


「あなたはやっていないと思いますが、あなたのお母さんにもう誰も殺さないでほしいと伝えてください」


 藁人形で人が死んでいる、とも取れるメッセージだ。俺はここまでしかできなかった。

 すぐ返事が来た。


「そんなの言えない」


 確かに、養ってくれてる人に稼ぐのをやめろとは言いにくいかもしれないが。

 俺は返事を送った。


「あなたは、あなたが思っているよりたくさんの人に見られていますよ。メルカリもヤフオクもアカウントを削除して、もう二度と売らないでください」


 しばらく返事はなかった。俺は、やりとりのスクリーンショットを取り、少し待ってからヤフオクを見ると、アカウントが消えていた。メルカリも、アカウントが消えた。

 とりあえず、これ以上呪いの藁人形が世に出回る可能性は消えた。よかった……。

 大きく息をついた俺を見て、千歳がなにか察したみたいだ。


『うまくいったか?』

「行った、なんとか」

『じゃあ、夕飯の支度するぞ。叩ききゅうりと浅漬け、ちゃんと作ったからな』

「ああ、ありがとう」


 憂いなく千歳との夕飯を迎えられて、よかった。でも、もうすでに相当数の呪いの藁人形が出回ってるんだよなあ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ