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販売状況調べたい

 新幹線に揺られながら、メルカリとヤフオクをチェックしている。どちらも藁人形がそれなりに売られていて、少し探したが、さっきのとそっくりな藁人形をたくさん売っているアカウントを見つけた。

 どちらのアカウントの名前もローズ。どちらの商品の説明も【相手に縁があるものをつけて釘を打てば完了】とある。そして、やたら評価が高い。

 メルカリの評価コメントにも、ざっと目を通してみた。


 〈パワハラ上司が倒れました、ありがとうございます〉

 〈夫に効きました、高評価です〉

 〈元嫁に使いました、リピート希望です〉


 コメントに、サクラっぽさをあまり感じない。おそらくはこのアカウントか。

 LINEで金谷さんにこの件を共有したところで、新幹線が東京に着いた。俺は隣で寝てる千歳を揺り起こしたが、千歳はなかなか眠りの国から戻らない。


『んー……もうちょっと……』

「ダメだって! 起きてよ」


 千歳は寝ぼけたまま、俺に両手を差し出してきた。


『だっこ……』

「む、無理!」


 気持ち的にも物理的にも無理だよ! 千歳、今成人女性並みの重さと背丈なんだぞ!?

 千歳は半分寝たまま言った。


『ちっちゃい子になるから……』

「わー! 姿変えるのもダメ! 待って待って!」


 千歳に肩を貸して、なんとか新幹線を降り、必死で家までの電車に乗り換えた。二人で席に座ると、千歳は俺にもたれてまた眠りに落ちていった。千歳のふわふわな体が俺に密着し、俺はその感触だけを感じていたかったが、まだやることがある。

 俺はスマホでDiscordを開き、俺のファンを名乗る例の人物にメッセージを送った。


「このローズってアカウント、メルカリとヤフオクの、和束美枝さんと関係あるか調べられる?」


 返事を待つ間に、和束美枝さんのTwitterアカウントとBlueskyアカウントをチェックする。確か、メルカリを使うとかなんとか、最近書いてたはずだ。

 書いてあるのは日々の愚痴だったが、その中にこんなポストがあった。


「母親が良くない商売を始めてて心配だけど、自分は養ってもらってるから何も言えない」

「お母さんにメルカリ頼まれてるけどたくさんありすぎてもうやだ」

「ヤフオクよくわかんない」


 やっぱり、和束みやびはメルカリとヤフオクで何かしている。

 そして、俺のファンを名乗る例の人物から返事が来た。


 [どちらのアカウントも、和束美枝の電話番号とメールアドレスで作られている]


 ああ、やっぱり。


「そうか、ありがとう」

 [運営に通報しておこうか? 私ならいくつかアカウントを作って通報できる。時間が掛かるが、運営自体に侵入して凍結することも可能だ]


 通報でアカウント停止も、運営自体への介入も、時間かかるか。

 2つのアカウントを止めると、アカウントの挙動から和束母娘の動向を探るのはできなくなる。でも、あんな呪いの人形を売るのを止めるほうが先じゃないだろうか。そして、アカウントを止めるには、もう少し時間がかからない方法がありそうだ。


「たぶん、「あなたは和束美枝さんですか?」ってメッセージ送ったほうが早い。それは俺がやる」

 [では、見ているだけにしておくよ]


 俺はヤフオクにログインし、ローズアカウントへ、出品者への質問としてメッセージを送った。


「あなたは和束美枝さんですか? メルカリの方も見ていますよ」


 金谷さんにLINEでここまでの経緯を共有したところで、家の最寄り駅に電車が着いた。俺は隣の千歳を揺り起こした。千歳は、今度はちゃんと目が覚めたようだ。


『あー、ごめん、めちゃくちゃ寝た……』

「いいよいいよ、夕飯食べ損ねたね。駅前でなんか買って帰ろうか」

『うん、弁当3つくらい食いたい!』


 健啖家でよろしい。


「うんうん、何でも買おう」


 二人で、遅くまでやってる駅前スーパーに向かいつつ、俺は言った。


「あのさ、あの藁人形、たぶん和束美枝さんが和束みやびに売らされてる、ネットで」

『えっそうなのか!?』

「後でゆっくり話すよ」


 そんなに長い時間じゃなかったが、それだけでずいぶんいろんなことがわかった。まあ、何かの助けになることを祈ろう。

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