仕事の段取り決めときたい
俺の軽井沢取材と、それに千歳が同行する件について、千歳と打ち合わせている。
俺はパソコンで千歳に地図を見せながら言った。
「軽井沢駅の南口側と北口側をそれぞれ1日で回るんだけどさ」
『うん』
「千歳には、最初の南口側の日は、このプリンスショッピングプラザ、次の北口側の日はここの旧軽井沢銀座通りをぶらついててほしいんだけど」
『えー、お前について回っちゃダメか?』
千歳は不満げだ。しかし、俺にも事情があるのだ。
「相手先には、俺1人で行って写真撮るってことになってるから、他の人がいると嫌がられる可能性が……あと、ショッピングプラザも銀座通りもレンタサイクルでいける範囲なんだけど、店がとにかくたくさんあるから、そこで1日過ごした人の感想を聞きたくて」
『おっ、じゃあお前の仕事の手伝いになるのか!』
千歳は色めき立った。
「うん、よろしく。そういうわけで、明日の夜、早上がりして軽井沢行きね。駅前のビジネスホテルに二部屋取ってあるから」
『え、お前と同じ部屋じゃダメか?』
千歳は残念そうな顔をした。同じ部屋がいいんだろうけど、そこも俺の仕事の事情がある。
「会社に出すホテルの領収書が2人部屋になると、いろいろ支障が出るんで……ごめん」
『そっか、仕事だもんな』
よかった、おとなしく引き下がってくれた。
「あと、できれば大人の姿でブラついてくれると助かるな、中学生くらいの子が平日観光地をうろついてたら怒られるかもしれないし」
『これでいいか?』
ボンと音を立てて、二十歳の朝霧の忌み子の姿になる千歳。こんなこと言ったらいけないと思うが、千歳が大人になると、体の線がより女性らしくなるので、俺はドキドキしてしまう。
俺は千歳からそっと目を逸らして言った。
「その、それでいいけど、体の大きさに合う服着てね」
『うん』
そう言うわけで、泊まりの荷物を整え、俺たちは軽井沢に行くことになったのである。