人の仕事のがんばりたい
俺が働く会社グリーンライトはフルフレックスだが、金曜午前だけは全員パソコンの前で仕事をすることになっている。なので、この時間にWeb会議をすることも多い。
そういうわけで、萌木さん・久慈さん・北明社長と俺とでWeb会議をしているのだが、これから少し働き方が変わりそうだ。
久慈さんが言った。
「でね、基本はみんな在宅だけど、やっぱり取材とか撮影が必要な仕事も増やしていくことになって、で、和泉さんにもその辺の仕事やっぱりお願いしたいんですよね」
「はい、わかりました」
北明社長がなんか申し訳無さそうにした。
「在宅で回していきたかったんですけどね、生成AIが絶対できない仕事もやっていかないとまずいなと思いましてね……」
生成AIは、確かに現地取材も撮影もできない。
「生成AIにできない仕事をするのは、私もそうしたほうがいいと思うので。やりますよ」
俺がそう言うと、萌木さんが言った。
「あと、和泉さんは写真撮り慣れてるから、そこも特に和泉さんにお願いしたいんだよね」
俺はおばあちゃんに送るために、毎日の散歩ごとに近所の花をスマホ撮影してる。写真のデータが結構溜まったので、会社に「適当な画像が欲しいときどうぞ」と提供したところ、その写真が妙に評価されてしまったのである。
「まあ、花くらいしか撮りませんが、景観とか店頭の写真には応用できるかもしれません」
「それで十分。画質が求められる時は会社でデジカメ貸与も検討するけど、今のところはあの花の写真くらい撮れれば十分だから」
「そうですか、わかりました」
北明社長が言った。
「で、ですね。ガッツリ取材が必要な案件が取れたので、まずそれを和泉さんにお願いしたいです」
「はい、どんな案件でしょうか?」
「軽井沢の、駅からレンタサイクルで行ける距離での見どころの特集です。絶対行くところのリストは決まってるので、そこを回って宿の景観撮って、写真も撮ってほしいです。各店の推してほしいポイントは事前に聞いておきますが、現地に行くことでの+α情報も入れたいということで」
「夏向けなのはわかるんですが、今から仕込むのは時期遅くないですか?」
はっきり言って、もう夏だぞ?
しかし、北明社長はさらっと言った。
「最近は10月まで暑いでしょう? シーズンオフを狙う人もいるし」
「あー、なるほど」
「詳細はまた別途Slackで送りますんで」
「はい、お待ちしています」
そんなこんなでWeb会議が終わった。
お昼ご飯の席で、俺は千歳に外での取材が増えそうだと話した。
「でも、探してる魂のこととか、和束母娘のこととか考えると、あんまり千歳から離れるわけにも行かないから、どうしようかなって」
『ワシも行って近くにいるようにするよ、ワシの分の交通費はワシが出す』
「それしかないかあ」
会社に千歳の交通費持てとも言えないしなあ。
「うーん、外に出る機会増えるし、でも夏はコロナ増えるし、またワクチン打っておこうかなあ」
『夏も打ってくれるのか?』
「病院によるかな。とりあえず、前打ってくれたところに聞いてみるよ」
前ワクチンを打ってくれた病院は、俺が自律神経失調症でずっとお世話になってたところである。午後に電話してみると、新型コロナワクチン打ってくれるとの返事だった。
病院の事務の人が言った。
「土曜、午後もやるようになりましたので、午後のお越しでも大丈夫ですよ」
「あ、そうですか?」
「常勤の医師が増えたので、以前ほどお待たせしないと思います」
「あーそうですか、ありがとうございます」
じゃあ、サクッと行ってサクッと打ってくるか。暑いから午前に行くけど。
行きつけの病院が待たなくなるのはありがたいな。ワクチン打つだけだから、新しいお医者さんに当たるかな?
 




