番外編 金谷千歳の安心
厄介なファンに厄介なことされて、和泉は疲れちゃったみたいだ。
「あーもー、まーたネットを教えなきゃならない子が増えたか、寝る前だってのに……」
和泉が天を仰いでうんざりした顔するから、ワシは慰めたくなった。
『別にお前が背負い込むことないだろ、ほっといて寝ろ』
「まあそうする事もできるんだけど、俺のファンを名乗る相手ってことは、俺の好感度を餌にいい方向に動かせるかもしれないって訳でね……無関係な顔もできない」
『苦労性だなあ』
でも、こういう所が和泉のいいところなんだよな、多分。こういう奴じゃなかったら、ワシのこと大事にしてくれなかったよな。
『まあでもいい時間だし、今日は寝ろよ』
「そうだねえ……歯磨いてくるか」
和泉は洗面所に行って歯磨きして、ワシもその後歯磨きして、おばけの姿になって、先に布団に入ってる和泉に巻き付いた。
和泉が、ワシの背中をそっとなでた。
「おやすみ」
『うん、おやすみ』
やっぱり、和泉にくっつくと落ち着く。ワシは、安心して目を閉じた。
和泉が高根さんとうまく行きそうなら、ワシはもう和泉と離れて寝ようと思ってた。でも、全然うまく行かなかったな。和泉は好きな人にもなかなか踏み出しそうにないし、しばらくはくっついて一緒に寝てもいいのかなあ。
でも、しばらくって、どれくらいになるんだろう。和泉も31歳だし、本当にそろそろ思い切ってほしいんだけどなあ。




