今更ながら気付きたい
電車に乗って帰る途中。俺は何となく、高根さんの好きな人ってどんな人だろうなと考えていた。
一生面倒見るってことは、今も細やかに面倒見るほど関係が近いんだよな。それで気持ちが通じないってなんだ? 千歳みたいに色恋興味ない人とか?
いやでも、高根さん、ここ何年かは稲口さんの面倒見る方に忙しかった感じだよな。他の人をそんなに面倒見られる?
そこまで考えて、俺はあることに気づいた。
まさか。
いや、でも、そう言えば高根さんは稲口さんと一緒の大学に行ったと聞いた。さすがに就職先は別だろうけど、それからも多分交友は続いていたはずだ、じゃなきゃDV彼氏から引き離そうなんてならないし。
高校も大学もずっと一緒、就職してからも身の安全の面倒を見る、それはもう……。
どこかで、同性愛者の割合は大体クラスにひとりくらいと聞いたことを思い出す。
「マジか……? いや、でも確率的にはありうるのか……」
思わず独り言を漏らすと、千歳が『どうした?』と聞いてきた。
「あ、いや、その……高根さんは、これからも稲口さんと仲良しなのかもなって思って」
『そうなんじゃないか? あんな暴力的な男から助けるくらいなんだから』
「う、うん……」
『ずっと仲良しな友達がいるの、いいよな』
「うん、まあ、そうだね……」
稲口さんは高根さんのことを、何くれとなく面倒見てくれる、いい友達と思ってるのかな。それは……高根さん的には切ないだろうな。
気持ちは、わかるよ……すごくわかるよ。
高根さんは、「和泉くんはうまくいくといいね」と言ってくれた。
でも、俺も、うまくいく可能性は全然ないんだよなあ。




