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確かにあるのはおかしくない

 華金。仕事を終えて、千歳ヤーさんのすがたとバスでスーパー銭湯に赴いた。


「ここレストランもあるんだよね」

『ホームページでメニューみたけど、うまそうだったぞ』


 今日は、夕飯はここで食べようとということにしていた。

 男湯へ向かうと、そこそこ混んでいる。服を脱いで、着替えその他をロッカーに入れつつ周りを見ると、ロッカーの使い方やタオルの巻き方がなんか手慣れている人が散見された。

 その中のひとりが、ロッカー鍵を左足首に巻いている。よく見ると、ロッカーカギを足首に巻いてる人がたまにいる。俺は手首に巻こうと思ってたけど、すでに左手首は組紐と閻魔大王様のお守りがあって、割と渋滞してるんだよなあ。


「通はさ、カギ足首に巻くのかな? 俺も真似しようかな」

『足首?』


 千歳になんとなく声を掛けると、千歳はあたりを見回し、そして愕然とした。


『……絶対に足首に巻くな』

「え?」

『手首に着けてれば安全だから!絶対に足首に巻くな!』


 千歳はガシッと俺の肩を掴んだ。ゴツいおっさんに両肩掴まれてすごい形相で注意されるの、中身が千歳じゃなかったらだいぶ怖い。


「そ、そうなの?」


 何らかの危険があるの?


『頼む、ワシを信じてくれ! 絶対に足首には巻くな!』

「う、うん、なんで?」

『り、理由は……その……』


 千歳は、何故かあわあわもごもごした。


「何か危ないの? 今日はやめにして、帰ろうか?」

『い、いや、足首に巻かなきゃいいだけだから! お前はサウナ楽しめ!』


 千歳はどんと俺の背中を叩いた。


「と、とりあえず手首に巻くよ」

『ほらっ、風呂行こう、サウナやりたいんだろ?』

「う、うん」


 気にはなったが、千歳は俺にサウナ楽しんでほしいみたいだし、足首に巻かなきゃいいだけみたいだし、とりあえずその気持ちは受け取っとこう。

 頭と体洗ってサウナ、水風呂、外気浴。なぜか千歳はずっと周りを警戒するようにしていた。なんで?

 サウナは体が温まってなかなか良くて、水風呂はびっくりするほど冷たかったが、外気浴に行って真価がわかった。体に血が巡る感覚と、それでいて体の表面は乾いてひんやりした感覚。素肌に当たる風が心地よい。


「あー、これが整う、か……」

『もっとリラックスしてなりたかったな……』

「千歳、なんかすごく周り見てたけど、なんで?」

『こ、この中では言えない……』

「そ、そっか」


 なんか千歳気を使ってるっぽいし、整うっていうのもわかったし、もうお風呂上がってご飯食べて帰ろうか。


「俺、もう整ったから、もう上がってご飯食べに行かない?」

『そうしよう! そうしよう!』


 千歳はホッとしたみたいに頷いた。

 館内レストランに行ってご飯を頼む。俺は野菜タンメン、千歳はビッグチキンカツ定食。

 食べてる千歳はニコニコで、普通に楽しんでいるようだった。じゃあ、お風呂になんかあったのか? 何がまずかったんだろう?

 バスに乗って帰る途中、俺は千歳に聞いた。


「あのさ、もしよかったら、足首にカギ巻いちゃいけない理由、教えてほしいな」

『あー……あの……言いにくいな……』


 千歳は頭を抱えた。


『お前、その……ハッテン場ってわかるか?』

「ハッテン……?」


 悪いインターネットの知識が押し寄せてきて、俺は理解したが驚愕が口から出た。


「えっあの、男同士の!? 相手漁り!?」

『そ、そう……』


 千歳は俯いた。


『その、足首にカギ巻いてる奴ら、見たら全員そんな感じで、それでピンときてさ……でも、そういうサイン出してる相手同士じゃなきゃ変なことしない決まりなんだろうとも思って、それであの場でその辺言うのもできなくて……』

「ま、マジか……」

『でもお前になんかされたら嫌だし、それでずっと周り気になってて……』

「そ、そうだったんだ……ごめん、変に気を使わせて……」

『いや、何もなかったからいいんだけどさ……』

「本当ごめん、いや、でも、マジか……」


 スーパー銭湯って、そういう出会いの場にもなるのか……。

 ……ん?


「え、なんで千歳そんなん知ってるの?」

『そ、それは……』


 千歳の目が泳いだ。


『い、言えない! でも信じてくれ! あそこはハッテン場だったんだ!』

「あんまおっきい声で言わないほうが……いや、疑うとかじゃないから。信じるよ」

『頼む、ごめん、言えない』

「うん、いいからいいから」


 そう言えば、千歳の中には陰間茶屋で働いてた人もいるんだっけ。それ関係か? 言いたくないなら言いたくないでいいけどね。

 そうか、千歳、俺のこと守ろうとしてくれたんだな。そっか……。


「ありがとうね、守ってくれて」

 そう言うと、千歳は少しはにかみ、それからややからかうように言った。

『いや、童貞捨てる前に掘られたら流石にかわいそう過ぎるしさ』

「前半余計! 余計!」

ヒント:倉沢静


Q.なんでこんな話書いたねん

A.参考にした銭湯を調べてたら爆サイで何百もスレが続いてる「出会いの場」でぇ……

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