間に合うのなら助けたい
藤さんが、閻魔様から情報を持ってきたとうちに来た。
「怨霊くんの日報読ませてもらったよ。もし生かされてるのが【アタリ】の子なら、それは霊の複合体の核になれる子なんだと思う」
そう言えば、探す魂10体の中にいたな、千歳みたいに霊の複合体を作れる魂!
「核……朝霧の忌み子みたいな?」
『ワシみたいな?』
千歳は、朝霧の忌み子が核となって、様々な強い霊が中に入っている霊の複合体なのである。
藤さんは頷いた。
「そう。でね、もし複合体作るなら、核はある程度大人のほうが自分で考えて動ける。基本的に、複合体の意思とか考え方は核のものになるから。和束みやびが、ある程度自分で判断できる複合体を作りたいなら、赤ちゃんじゃ話にならない」
『そっか、ワシ、基本的に朝霧の忌み子だ……』
確かに、千歳の性格や好みは朝霧の忌み子由来と聞いたことがある。
俺は藤さんに聞いた。
「じゃあ、今生きてる子はある程度育てなきゃいけないし、生きたまま助ける猶予はあるってことですか?」
「ある程度はあると思う。和束みやびが十分育ったと判断するのが、どれくらいの年齢かにもよるけど」
「なるほど……」
「複合体に向く魂が行方不明になったのは最近だから、生きてる子はまだ赤ちゃん。何年かの猶予はあると思う」
何年か、か……何年だ?
「その間に、助けに行けますかね……」
俺は胸が締め付けられる思いだった。ほんの赤ちゃんが、あと何年かしたら殺されるためだけに、育てられているなんて。
藤さんは、俺に言い聞かせるように言った。
「俺たちもできるだけのことはするから、なんとか努力しよう」
今のを頼もしい言葉ととるか、助けるための決定打はまだないととるか。意地悪な見方だが、後者の意味合いも多分にあるんだろうな……。
千歳が俺の腕を掴んで、俺を見上げた。
『和泉、ワシもがんばるから!』
「……うん、がんばろう」
俺は、俺の腕を掴む千歳の手に、そっと自分の手を添えた。




