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発想転換で探したい

「美枝の電話番号とメールアドレスから、美枝のSNSを探し出せん?」


 和束ハルがうちに来て言ったのは、そういうことだった。

 話は少し前に遡る。千歳がこないだ和束ハルの家に行った時、念のために和束ハルLINE交換しといたそうなんだけど、そのLINEから「和泉豊に頼みがある」と連絡が来たのだ。

 千歳からそう伝えられて、俺は面食らった。


「頼み? 何?」

『直接話したいって』

「えっ、和束ハルって俺のこと怖いんじゃないの?」

『怖いけど、怖いからこそ頼めるって』


 何だそりゃ。


「うーん……とりあえず、今日明日なら休みだから会えるけど」

『じゃあそう送るな』


 千歳はスマホをいじり、そして顔を上げた。


『今うちに来ていいかって、高千穂先生と一緒に』


 ラブドールの遠隔操作で!?

 まあ、俺が了承したので、和束ハルは高千穂先生に伴われて家に来た。俺たちは家にあげて、和束ハルが俺に怯えながら言ったのが先程の一言だ。

 和束ハルはさらに言った。


「その、高千穗さんと話し合って決めたんや。あんた、うちの名前だけでSNS全部特定したやろ? 美枝の連絡先で、なんか、そんな感じのことでけへん? そこから、美枝の手がかりを辿れん?」


 俺が怖いからこそ頼めるって、そういうこと!?

 しかし。


「いや、そもそもそれ、生きてるアドレスなんです? 番号も変わってるかもだし」


 和束美枝を見た人はここ20年誰もいない。和束美枝の連絡先を知ってるとしても、メールアドレスも電話番号も、20年前のものの可能性がある。

 和束ハルは言った。


「一応、メールしてもMAILER-DAEMONは出んかった。番号は、高千穂さんがかけたんやけど、一瞬だけ出た」


 高千穗先生が補足するように言った。


「多分美枝ちゃんかなって声がしたんですよ、「高千穂さん?」って。その直後に多分みやびさんかなって声の「切れ!!」って大きい声が聞こえて切れちゃって」

「なるほど……」


 それなら、メールアドレスも電話番号も、おそらくは生きてる。そう言えば、俺のファンを名乗る不審人物も、和束美枝名義の携帯キャリアあるって言ってたな。

 旧TwitterにもInstagramにも、自分の連絡先から友達を見つける機能はある。でも、どの連絡先がどのアカウントかの紐付けができないし……。

 ……いや、待てよ?

 俺は和束ハルに言った。


「とりあえず、和束美枝さんのメールアドレスと電話番号くれませんか? 試してみたいことがあるので」

「ええと、せやな、金谷千歳、今そっちのLINEに送るから、コピペして送ってくれん?」

『オッケ』


 千歳からのLINEで、和束美枝さんのメールアドレスと電話番号を確認する。よし、ここからだ。

 俺の連絡先アプリを開く。運よく、連絡先をエクスポートして逃がしておける機能があった。エクスポートしておいてから、すべての連絡先を消す。その後、和束美枝さんのメールアドレスと電話番号のみを連絡先として登録。

 俺は、閲覧用だけに使っている旧Twitterの個人アカウントを開いた。連絡先をアップロードして友達を探す機能があるので、アップロードして反応を待つ。

 ひとつのアカウントが、友だち候補として現れた。


「いた。見つけました、和束美枝さんのTwitterアカウント」

「は!?」


 和束美枝はあんぐり口を開け、千歳も高千穗先生も『えっこんな早く!?』「どうやったんです!?」と騒いだ。

 俺が手短にやり方を説明すると、和束ハルは震え上がった。


「こ、こんな恐ろしい男を敵に回すんやなかった……」

「別に、誰でもできることですよ」


 Instagramでも似たことを試したが、こちらは何もなし。ひとまず、旧Twitterアカウントを見ていく。

 アカウント名はマイカ。プロフィールには「ひきこもりの家事手伝い 感覚過敏」とある。ざっと投稿を見ると、日々の家事や体調の愚痴、作った料理メニュー、好きらしい漫画やYouTuberのRT。もう少しさかのぼると、Blueskyにもアカウントを作ったとアドレスが貼ってあった。あとでこっちも見とこう。

 マイカアカウントは2009年にできたアカウントとある、かなり古いアカウントだ。できるだけログを遡りたいけど、今はXとなった公式アプリじゃなかなか難しい。

 Twitterのログ見やすいサイトはTwilogだけど、和束美枝さんは登録してないかな? あれも去年くらいからツイート取得が有料になっちゃったけど、去年までのが見られるだけでも相当参考になる。

 ダメ元で調べると、Twilogもあった。しかもまさかのTwilog課金ユーザー! 去年以降の投稿も、全部Twilogで読める!

 俺は成果をその場の三人に説明して、そして言った。


「流石にツイート全部遡るのはこの場じゃできないから、これからひとりで、できるだけ読んでみます」


 和束ハルは、ごくりとつばを飲み込むようにし、頷いた。


「頼むわ……」

「頼まれました」


 俺も頷いた。

 俺は人より少し字を読むのが早い。本は好きだったし、Webライター兼編集という職業柄もあるし。それが、役に立ちそうだ。

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