閑話 夏とスカート
千歳が洗濯物を干し終わって、ベランダから戻って言った。
『この5月は涼しいな』
「夏も暑くならないかもって」
『ふーん、じゃ夏はスカートにしなくていいかも』
「えっ、夏とスカートに何の関係が?」
千歳はきょとんとした。
『え? ワシ暑い時しかスカートはかないぞ?』
「えっそうだっけ!?」
記憶をたどる。去年の夏の千歳の白ワンピースの衝撃が強すぎたが……そう言えば、夏以外はハーフパンツとか、長めのチュニックにスキニージーンズとかで、確かに夏以外スカート姿を見ない!
「い、言われてみて初めて気づいた……」
『暑いときはスカートめちゃくちゃいいんだけどさ、それ以外だとちょっとスカートでいいのかなって思っちゃうんだよな、ワシ女じゃないしさ』
「似合うのに」
『暑いときははくよ』
千歳は何でもないように言った。うーん、千歳の性別って複雑な所あるからな。暑いという理由があればスカートにするけど、理由がなければスカートにはしない、くらいの塩梅なのか。そう言えば、狭山さんの結婚式の時もスカートはいていいのかなって感じだったし。
しかし。
「スカートって、そんなに涼しいの?」
『そりゃあ、開放感とか、風の通りとか』
「へえー……」
男の俺にはわからない感覚だ……。
『お前も浴衣かなんか着れば、なんとなくわかるよ。足と股の間に生地がないって、それだけで風が通るぞ』
「浴衣はちょっとハードル高いかな……」
着付けもなんもできないしさ。
まあ、千歳が着たいときに着たい服を着て、快適に過ごしてくれるなら俺はそれが一番だ。
……まあ、白ワンピ姿はまた見たいけど。




